曲は、わすれがたい旅の記憶から生まれて、ゆるぎない「うた」になることを願って書かれた。これらは信頼する多くの友人によって、演奏されてきた。また、彼らから曲の構造や和音の重ね方などについて様々な意見や解釈を聞くのは、とてもここちよい時間だったことを思い出す。記譜上のアーティキレーションやテンポは演奏方法の一例として、演奏者がそれぞれ独自の解釈をしてもらって構わない。また状況に応じて、さまざまな編成で演奏することも可能である。
《魔法の庭》は、異国の不思議な長方形の庭、すなわちサッカーのフィールドをイメージした作品である。作曲当時、イタリアはフィレンツェの「フィオレンティーナ」というチームで、ポルトガル代表のルイ・コスタという名選手が10番を背負いチームを牽引していた。彼と、当時のフィオレンティーナ、そしてポルトガル代表の試合は、一般的にイメージされる「球技」としてのサッカーとは、何かが決定的に違っていた。サイボーグのようなジダンや技巧的なメッシとも違う。そこには幻想的な空間と時間が広がっていたのだ。わたしには、このような陳腐な表現しかできないが、当時を知る人にはご理解(というより共感を)頂けると思う。それは確かに、普通ではなかった。