ローリー(ローレイ) :From My Sketch-book(私のスケッチブックから) ミスター・パンチ Op.39 No.5 ト長調

Rowley, Alec:Aus meinem Skizzenbuch(My Little Sketchbook/From My Sketch-book: Ten Short Pieces) Mr. Punch G-Dur Op.39 No.5

作品概要

楽曲ID:92382
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:0分40秒
著作権:要調査
ピティナ・コンペ課題曲2025:B級

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:応用2 応用3 応用4 応用5

楽譜情報:1件

解説 (1)

解説 : 熊本 陵平 (976文字)

更新日:2025年3月4日
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 三部形式である。

 序奏[1から8小節]

A[a(9から12小節)+b(13から16小節)]

B[b(17から24小節)+移行楽節(25から28小節)]

A1[a1(29から32小節)+コーダ(33から40小節)]

 主調はト長調であるが、部分的に教会旋法(リディア調)が感じられる。

序奏では固有音第4音cが半音上がってcis、それと属音d音で短2度の不協和音程から始まり、それが調性感を曖昧にしている。3から4小節で主和音Ⅰの空虚5度が現れると、楽節全体としてはg音を終止音としたリディア調を感じさせる。このリディア調と空虚5度の響きの組み合わせは民族音楽を連想させ、バルトークを思い起こす。

9小節からはd音を終止音としたリディア調であり、序奏との関係においては属調にあたる。16小節ではa音のオクターブとなっていて和音が形成されていないが、こうした流れから考えるとa音は主音ではなく属音であり、16小節は半終止ではないかと考えられる。一方13小節からのgis音はa音に対しての導音と捉えると、全終止とも考えられる。いずれにせよ音が少ないために推測でしかないが、調性の判別は和声をどう捉えるかによって異なってくるため、このようにあらゆる可能性を考えつつ解釈をまとめていきたい。この9小節からの4小節はその後29小節から主調ト長調によって再現されていることから、これが主題だと考えられる。

 17から18小節はイ長調におけるドッペルドミナントの第5音下方変位(増六わおん)である。これが半音階進行によって下行してト長調の属7を迎える。21小節からも下行進行であるが一つの形が反復的に下行していくため、和声感よりもそうした音形による横の流れの方が意識されやすい。25から28小節は、ソナチネやソナタでよく見られる再現部に進行する手前にある移行楽節である。これは実はバッハのインヴェンションにおいても見られる主調や主題に戻るための古典的構成である。

 33小節からの4小節は13小節からの4小節と異なり、2小節間の半音階進行が反復される。ここにはアッチェレランドと指示されていて、ここから終結に向かっていくのである。全体として短2度・減3度の不協和音程、空虚5度の力強さが目立つ楽曲であり、標題通り怒りっぽいキャラクターであるミスター・パンチを表現していると思われる。

執筆者: 熊本 陵平

楽譜