ドビュッシーへのオマージュ。タイトルはドビュッシーの「夢」と同一。淡く紗をかけたようなドビュッシー的素地を基調とし、清新な現代感覚をも盛り込む。既存の有名曲の本歌取りは、創作者の素養が問われ、一歩間違えれば底の浅い地金が露呈するリスクを伴うところ、ロシェロールは少しの気負いもなく巨匠への敬意と自身の個性とを両立させている。ドビュッシーの「夢」との比較では、甘美なロマンティシズムを抑えるかわりに、繊細で物憂い表情を前面に出してきた印象を受ける。ドビュッシーの六全音階は好き嫌いの分かれる手法であるが、ここでは六全音階をデリケートな分散和音に溶け込ませるなどして、誰の耳にも違和感なくなじむよう、こまやかな配慮がなされている。チェルニー40番程度の難度。複雑な転調、臨時記号の読み解き、非定型のアルペッジョ奏が難しい。Kimberly Blair Condron への献呈。