テーマ(主題)が3小節分にもなる長いテーマで、シークエンスで出来ているため、まずこのテーマの方向性をどこに持っていくかが問題になります。
1小節目から始まり、1小節目3拍目より、2拍単位の下行形シークエンスが始まります。3小節目の4拍目は察するにドミナント(ACisEG)ですが、3拍目のDを掛留音として4拍目まで伸ばしていると考えられますので、4拍目表拍の付点8分音符Dはテンションが高く、故に、方向性はこのDに持って来ることも可能性の1つです。
通常シークエンスは上行形をクレシェンド、下行形をディミヌエンドにすることが多くありますが、例外も多くあります。つまりはこのテーマ、1小節目、Aから始まり下行して、最終的に完全5度下のDまで降りてきますので、全体をディミヌエンド=最初が最も大きい と考えることもできます。
もう一方で、3小節目4拍目の表拍のDに方向性を向けた場合、冒頭のAはppで始まり、徐々にクレシェンドをかけ、3小節目4拍目のDに達するという考え方です。
このフーガはそれでなくとも相当な数のシークエンスが出てきます。最も避けたいのは、これらのシークエンスの強弱が平坦になってしまうことであり、何らかの強弱の変化を付けることが重要です。故に、最初にテーマの方向性を決め、そこから同じマナーで最後まで進みますが、筆者個人的な見解は、ppから始まり、徐々にクレシェンドをかけるという2番目のやり方を取ると思います。