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レスピーギ :リュートのための古風な舞曲とアリア 第3集 P 172

Respighi, Ottorino:Antiche arie e danz per liuto, terzo serie P 172

作品概要

楽曲ID:7914
作曲年:1931年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:17分30秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (1)

執筆者 : 小林 由希絵 (1617文字)

更新日:2018年3月12日
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レスピーギの数ある作品の中でも、「ローマ三部作」と並び人気のある曲。第1集から第3集まで各4曲ずつ、計12曲で構成され、第3集は晩年にあたる1931年に作曲。タイトルには「リュートのための〜」とあるものの、リュート曲ではなく、16世紀前後に書かれたリュート曲を弦楽合奏とピアノ曲に編曲したものである。    「リュート」とは、中世・ルネッサンスからバロックにかけて用いられた小型の撥弦楽器のこと。バロック時代までは、独奏楽器としてはもちろん、歌曲の伴奏や合奏などにも重宝され、宮廷や民衆の間でも高い人気を誇っていたが、バロック音楽の時代が終わりを迎えるのと共に、リュートは古典派の新しい音楽スタイルに適応することができず、古楽の歴史の中に忘れ去られてしまった。しかし、19世紀末になると、ルイジ・トルキやオスカル・キレゾッティなどの音楽学者の手によって古楽研究が進み、再びリュートに注目が集まるようになる。  ボローニャ音楽院在学中にルイジ・トルキから音楽史を学び、古楽に興味を持ったレスピーギは、ローマのサンタ・チェチーリア音楽院で教授を務めていた間、音楽院の図書館で歴史の中に埋もれてしまった古楽の楽譜を見つけることを楽しみにしていたという。そんなレスピーギがチェチーリア音楽院の膨大な数の蔵書の中から探し出したのが、この曲の原曲となったオスカル・キレゾッティの編纂によるリュート曲集だったのである。この曲は、レスピーギの古楽へのあくなき探究心の結晶といえよう。  レスピーギはこの曲について、「原曲の持つ気品と香気を失うことなく、原曲の時代と性格に相応しい和声を配し、管弦楽の衣を着せた」と語っているが、レスピーギは中世・ルネッサンスのリュート音楽の息吹をみずみずしく蘇らせ、人々の記憶から忘れ去られてしまったリュート音楽に再び光を当てることとなった。 1.イタリアーナ  アンダンテ、4分の3拍子。ニ長調。 16世紀の末に書かれた作曲者不詳の舞曲が原曲。「イタリアーナ」という曲名からもわかるように、中世のイタリア音楽らしさが全面にあらわれている。左手の伴奏形が印象的だが、これはリュートの伴奏形を模したもの。弦楽合奏版では、チェロのピチカートがこのパートを担っている。どこがで聴いたことがあるような懐かしくも哀愁の漂うメロディで、この曲集の中でも最も有名な曲となっている。 2.宮廷のアリア  原曲は、16世紀から17世紀にかけて活躍したフランスのリュート奏者ジャン・バティスト・ベサールが1603年に出版したリュート曲集による。いつくかのアリアを集めて一曲にまとめており、それぞれに〈お前に恋することは悲しい〉〈さようなら、羊飼いの女よ、永遠に〉〈はっきりと見つめる愛らしい眼〉などの原題がついている。曲の終わりは、冒頭と同じアリアが繰り返され、全体の統一感をはかっている。 3.シチリアーナ  アンダンテ、4分の3拍子。ロ短調。 16世紀末の作曲者不詳の曲。「シチリアーナ」とは、イタリア南部のシチリア島発祥の舞曲のことで、ルネッサンスの終わりからバロック初期によく演奏された。物憂げで叙情的なメロディと、付点のリズムが特徴的な8分の6拍子の曲である。全体的には変奏曲形式で書かれており、どこか物悲しげで優雅なメロディは、一度聴いたら忘れられない魅力を放っている。 4.パッサカリア  マエストーソ、4分の3拍子。ト短調。 原曲は、イタリアのギター奏者ロドヴィゴ・ロンカッリが1692年にパレルモで出版した「スペインギターのためのカプリッチョ」の中に収められている9つの組曲のうちの一曲。「パッサカリア」とはスペイン語で「街を歩く」という意味の言葉だが、16〜17世紀にイタリアやスペインをはじめヨーロッパ中で流行した3拍子の舞曲をさす。組曲の最後に使われることが多く、この曲集のフィナーレを飾るに相応しい曲と言えよう。

執筆者: 小林 由希絵

楽章等 (4)

イタリアーナ

総演奏時間:2分30秒 

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楽譜0

宮廷のアリア

総演奏時間:7分30秒 

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編曲0

シチリアーナ

総演奏時間:4分00秒 

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パッサカリア

総演奏時間:3分30秒 

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楽譜0

編曲0