以下の文章は、筆者の主観であって、強制するものではありませんので、1つの考察とお考え下さい。以下は単純に筆者が感じる事柄です。和音が並んでいるところに、arpeggio と書かれてあると、和音を分散して演奏するのですが、その分散の仕方も様々であり、それによって雰囲気が変わってきます。
仮に8小節目のように(8小節目は実音で書かれていて、和音で書かれてはいないのですが)、上行して下行するような分散の仕方というのは、曲が前へ前へと進む感じを受けます。つまりは落ち着きがなく聞こえます。
そしてそれは分散した時の音符の速度にもよって変わってきます。分散の速度が速ければ更にテンションはあがり、落ち着きが無くなります。
分散の仕方として、下から上へ、一方通行で上行させることも分散の方法であり、この場合、上行して下行するよりも落ち着いた感じを出すことができます。
このプレリュードには、和音の分散をわざわざ実音で書かれている小節があり(例:8~10小節間)、ヘンデルは何故ここに和音を書かずに、実音を書いたのか、後に来る和音も単純に上行下行するだけであれば、何ら8~10小節間と変わらないのではないか、色々考えてみましょう。
19~20小節間のように、カデンツ(終止)であれば、動きは少し止めた状態で落ち着きが欲しいので、下から上へ和音を分散させるだけに留め、上行して下行する運動を繰り返す場所では無いと思いますが如何でしょうか?