梅本 佑利 :One Stroke
Umemoto, Yuri:
作曲者による : 梅本 佑利 (358文字)
◾️作曲者から
この作品は一つの小さな「書」です。
僕は幼いときからずっと書道を習っていました。文京区にある由緒正しきお寺の中の、小さな書道教室で、毎週通っていました。
小さな僕は先生のお手本通りに綺麗に模写しようと手が震える。でも、先生は、僕みたいに余計な力を入れずにさささっ、と、書き上げる。
演奏のポイントとしては、書道でいう、「とめ」、「はね」、「はらい」をしっかりやる。それでいてササッと、まるで一筆のように。
僕は、どう片手だけの演奏を両手に聴かせようとか、片手の限界突破、とかそういうものには全く興味がありません。片手であるという、たくさん特徴がある中での素晴らしく個性的な、この一つの特徴をどう活かすかが、作曲する際のポイントでした。
「one stroke」という発想はそこから生まれています。
解説、演奏のヒント : 杉浦 菜々子 (365文字)
◾️楽曲について・演奏のヒント
2020年作曲。2020年3月13日ピティナ公開録音コンサート「日本人作品の夕べvol.6」で杉浦菜々子によって初演された。連作となる左手のための小品の第一曲目。
演奏時間1分のこの楽曲には、弾き始める前から、終わりの最後のストロークを見届けるまで、周りの時間を止めてしまうような静かで強いエネルギーがあります。書に向かうのと同様に静かな心で筆(腕や指)の運びに集中します。ペダルは、ad lib.の記載があり、自由ですが、作曲者の梅本氏は、ペダルの量を水の量、と表現されています。水の量は、演奏者に任されており、楷書のようなタッチもあれば水墨画のようなタッチもあり、演奏者がそれぞれ異なった美意識を表現することができます。15小節目からは、叙情的に少し緩やかに演奏してもよい、と梅本氏の言です。
One Stroke for piano (left hand)
楽譜 【HP】梅本佑利 楽譜販売
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