特にどこかで発表するという予定があるわけでもなく、純粋に(?)書かれたものである。だから、おそらくその時一番書きたいものを書きたいように書いている・・・つもりである。そしてこれからも書き溜めていければと思っている。各曲は余りにも短く、断片的である。強いて言えばこれらは一種の自画像という面も含められるであろう。
1.抗えない音/定速で鳴らされる右手の音型に伴って左手の旋律が歌う。それは次第に自由を求めるかのように即興的になっていくが、結局また右手の音型に誘われるように吸い込まれて消えていく。
2.湖面の香り/森の中の湖とそこに映る月、そして星空といったイメージ。柔らかい光に照らされて湖は一層美しく、神秘的な輝きを放つ。ひたすら静かな夜がそこにはある。
3.白い道/漂う様なワルツ。暖かい午後にまどろむ様な。尚、この曲は拙作Arcadia(電子音響作品)において引用されている。
4.森に宿る大気/題名にあるように、この曲はある森の中の情景を描写している。森に立ち入るとやや霧がかっており、葉や梢の揺れる様、鳥や小動物のざわめき、そしてどこからか切なげな歌が聞こえてくる。それらは次第に森の静寂に溶け込んでいくが、やがて夢から覚めるように最初の情景に戻ってくる。
5.回転木馬の見たもの/メリーゴーランドは小さな旅をさせてくれる。色々な景色を見せてくれたり、楽しげな音楽を聴かせてくれたりする。それは自分だけのための夢のような世界である。しかし木馬が同じ場所に戻ってきた時、不思議とその時の景色は見え方が変わっていたりするのだ。幼い頃に見ていたものが年を重ねるにつれて見え方が変わってくるように。それでも木馬は回り続ける。それは淡々とした日々を過ごしている私たちそのものを象徴しているように思えてくるのである。