主題と8つの変奏からなる(最終変奏はコーダを兼ねる)。
主題:民謡「かごめかごめ」を主題に、バスをつけた簡素な書法によっている。時折、模倣風の応答が聴かれるが、それは模倣というほど手の込んだものではなく、いわば「間(あい)の手」である。
第1変奏:前奏曲風の上行アルペッジョだが、方向性のある和声ではなく、a-d-e-gの4音のみを用いるこだまする呼び声のような性格をもつ。残響が美しい。
第2変奏:明確に箏曲の様式を模倣した作風で、古き日本の「家庭的」雰囲気を持つ。
第3変奏:うってかわって、舞踏風の反復的な伴奏を持つモダンな様式。途中、半音外的な走句によって主題の原型が消えるが、最後の4小節で戻ってくる。
第4変奏:4度音程による重音(バス)と隣接する3音のクラスターがリズミカルに交替する。バスに主題が置かれている。
第5変奏: a-h-d-e-gの5音で構成される旋律・和声を基礎とし、そこに半音を織り交ぜることで、うねるような独特の響きを創り出している。もはや主題の面影は見えない。
第6変奏:うってかわって、主題をはっきりと打ち出したアルペッジョによる変奏。ふたたび箏を想起させるが、高音だけが用いられ、半音階的な動きも聴かれる。
第7変奏:第3変奏のモダンな舞踏的な様式による。手の交差を交え、技巧練習という側面も強い。途中、箏のようなアルペッジョが差し挟まれ、様式のコントラストを生む。
第8変奏(コーダ):性格は第7変奏を引き継いでいるが、7度の跳躍など、いっそうモダンな響きが追求されている。後半の旋律とトレモロの組み合わせは、ドビュッシーのピアノ書法を思わせる。主題は、ほとんど解体されている。