1 ダイナミックについて
2 ペダルについて
3 フレーズについて
まず、1つ目のダイナミックに関してです。これは全音版ですが、果たしてここに書かれてあるぴあのマーキングとフォルテマーキングがオリジナルのものかどうか(後から編集されたものかどうか)という疑問が1つあります。このダイナミックを素直に守り、下手をすると大変乱暴な曲になりかねないからです。仮にこれが作曲家が書いたものとしましょう。それでも、極端なp F の変化は付けない方が無難です。フォルテマーキングを見ても、テンションが少し高まる位に考えた方が曲として成り立ちます。
そしてこれは2つ目の、ペダルと関連してくる話になりますが、仮にこの曲をペダル無しで演奏した場合、3小節目、1ー2拍間の右手のように、同じ音をリピートすると切れてしまいます。その上フォルテとなると大変マルカートで堅く、乱暴に聞こえます。この曲はある種、歌をイメージしています。伴奏の上に歌が乗っかっているイメージですので、レガートラインが望ましいです。同じく、7小節目もリピート音がメロディーにありますね。
果たして、メロディーラインはできる限りカンタービレでなめらかに、フォルテ、ピアノの差を極端に付けすぎないこと。フォルテといってもリストやラフマニノフのようなフォルテには絶対にしないこと。多少テンションを高めるくらいに考えます。
曲中フォルテは3つ書かれていますが(3小節目、7小節目、14小節目)、同じフォルテでも異なったダイナミックだとお考え下さい。これに関しては、3つ目のフレーズのところで話します。
2つ目のペダルの話です。3小節目、1ー2拍間のようなメロディーをなめらかに繋げたり、左手のアルペジオを滑らかにする目的のため、ペダルを使うことを強く推奨します。この曲も、ペダルがありと無しでは全く別物になります。しかしながら、どうしてもペダルを使用しない場合、左手のバスの音を5の指で押さえ続け、決して次の和音まで離さないようにする、フィンガーペダルを用いてみて下さい。これだけでもだいぶ違ってきます。
それからリピート音、3小節目、1ー2拍間、6小節目、3ー4拍間、等、リピート音はできる限り、鍵盤から指を離さないように、1つの音から次の音に行く際に、切れ目がないように心がけて下さい。
3つ目にフレーズに関してです。この曲は、4小節単位のフレーズが4つあると考えます。そして最も重要な事は、この4つが全て異なったムードであることです。平坦に弾いてはいけません。
1つ目のフレーズ(1ー4小節間)、とても単純に演奏して下さい。そこまでドラマティックな事はありません。3小節目、多少感情が強まる部分ではありますが、それでも極端にしないようにします。
2つ目のフレーズ(5ー8小節間)、がらりと色が変わるフレーズです。驚きの転調と考え、音色を変えます。個人的に、7小節目のフォルテは、音を大きくするより、むしろ音量を一気に落としても良いと思います。
筆者であれば、フォルテマーキングを書くのはむしろ、3つ目のフレーズ(9ー12小節間)の、11ー12小節間だと思います。
そして4つ目のフレーズ(13ー16小節間)、音は最高音のCに達しますね。ここでもそこまで大きくはしないと思います。
つまりは、この4つのフレーズを奏者がそれぞれどのように感じるか、それによってムードやダイナミックを変えて行きます。ただし、4つの異なった物語とは考えず、1つの物語の中に、4つの異なったドラマがあると考えて下さい。