ホーム > 剣持 秀紀 > ピアノ独奏のための《ピンチェ》(2015)

剣持 秀紀 :ピアノ独奏のための《ピンチェ》(2015)

Kenmochi, Hideki:"Pintje" for piano solo (2015) [commissioned by and dedicated to Hiroaki Ooi]

作品概要

楽曲ID:62273
作曲年:2015年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:種々の作品

解説 (1)

解説 : 剣持 秀紀 (1002文字)

更新日:2019年5月14日
[開く]

私は、1996年から1999年にかけて仕事の関係でベルギーの西フランデレン州のPoperinge(ポペリンゲ)という町に滞在したことがある。そこで、音声合成の技術開発を行っていわゆる「音声屋」となり、その時の経験が後のVOCALOID開発につながった。その時のベルギー滞在は出張ベースではあったが、トータルの滞在期間は1年半ほどに及び、定宿にしていた小さなホテルを経営していたご家族とは今でも交流がある。私の結婚式のために来日して下さったほどである。

  さて、ベルギーという国は面白い国で、北半分のフランデレン(Vlaanderen、英語だとFlanders)地域ではオランダ語圏、南半分のワロン(Wallonne、英語だとWalloon)地域ではフランス語圏である。建国以来オランダ語系住民とフランス語圏住民は対立が続き、1993年にベルギーはフランデレン地域、ワロン地域、そしてブリュッセル首都圏の区分の連邦制となった。そして、フランデレン地域の「国歌」が "De Vlaamse leeuw”(フランデレンの獅子)である。複符点に特長がある。歌詞と意味は以下の通り。(Wikipediaをもとに修正)

 Zij zullen hem niet temmen, de fiere Vlaamse Leeuw,

 Al dreigen zij zijn vrijheid met kluisters en geschreeuw.

 Zij zullen hem niet temmen, zolang een Vlaming leeft,

 Zolang de Leeuw kan klauwen, zolang hij tanden heeft.

 誇り高きフランデレンの獅子は何者にも服従しない

 たとえ彼の自由が足枷と叫び声で脅されても

 フランデレンの獅子が生きている限り何者も彼を飼いならすことは出来ない

 獅子が引っ掻く限り、彼が歯を持つ限り

  私が滞在していたポペリンゲはフランスの国境まで自転車で20分なのにオランダ語圏であった。どうもオランダ語の中でも「ズーズー弁」の地域らしい。それはさておき、ポペリンゲはホップの産地であり、初秋には収穫期を迎えた見事なホップの蔓があちこちで見られる。3年に一度「ホップ祭り」(Hoppestoet)なるお祭りも開催される。そんなことも思い出しながら作曲してみた。

執筆者: 剣持 秀紀

楽譜

楽譜一覧 (0)

現在楽譜は登録されておりません。