バッハ :第17番 前奏曲とフーガ 第17番 フーガ BWV 886 変イ長調

Bach, Johann Sebastian:Prelude und Fuge Nr.17 Fuge Nr.17 As-Dur

作品概要

楽曲ID:62218
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:2分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

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楽譜情報:2件

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (655文字)

更新日:2023年9月14日
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多くのバッハの作品にはテンポマーキングがありませんので、我々は彼が用いる調性からそのキャラクターやムードを想像し、テンポを決めていくのですが、テンポによって全く曲が変わってしまう場合もあれば、テンポが速くても遅くても根本のアイデアは変わらない曲もあります。

このフーガはテンポによってムードが変化するフーガではなく、速くても遅くてもそこまで曲は変化しません。

このフーガは少なくとも悲しみの感情表現ではありません。筆者が注目したのは彼が用いる半音階的進行です。半音階的進行は、今だからこそ特筆することではありませんが、この時代に半音階的進行というのは、湾曲した、タブー的表現であり、特に下行形は悲しみの表現とも言われています。

5~6小節間、テノールのテーマが出ているとき、ソプラノは半音階的進行で下行していますね。

音は、As G Ges F Fes Es です。これを例えば、As↗ Des ↘G ↗C ↘Fとしてテーマと合わせて弾いてみて下さい。これでもしっくり来るはずです。そしてこちらの方がより楽天的ですね。

バッハの半音階的進行下行形は多くの彼の作品に見られますが、このフーガの場合、「悲しみ」ではなく、「おしゃれ」「不思議」「夢」「幻」などの幻想的描写であり、感情表現ではないと筆者は考えています。そしてそれは、彼が用いるE-durや、H-durの世界に似ている、ダイレクトではない、タッチできない、異次元と考えています。

故に、少なくとも、テーマとペアで半音階的進行が出てくるときは強い表現は避けて下さい。

執筆者: 大井 和郎
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