第19番 イ長調 【プレリュード】
優雅な3声のプレリュードです。このプレリュードはまさに横に流れなければならないプレリュードです。横に流れるためには拍を感じさせない工夫が必要で、その1つにペダリングがあります。
左手の連打音や右手のパッセージなどあらゆる部分に「瞬間的に」ペダルを用いて、ラインを繋いで下さい。このプレリュードは例外なく完全なる3声でできています。各声部は全て理にかないます。奏者は声部を見間違えること無く、きっちりと認識して下さい。例えば、14-15小節間、14小節目の付点全音符のバス、Cisは、15小節目の1拍目、付点4分音符のDと繋がります。このDは、一見すると14小節目のアルトから繋がっているように見えますのでこのような場所を気をつけます。アルトは15小節目ではト音記号のHに跳躍していることが解ると思います。
加えてこのプレリュードは、休符が実に細かく書かれています。例えば4-5小節間のバスの一連の4分音符は、必ず8分休符とともに書かれていますので、厳格に8分休符を守ります。25-26小節間も同様です。これらの、4分音符+8分休符の通奏低音のような音型は実はバスの声部にしか書かれておらず、アルトソプラノには出てきません。こうしてみると、バスの声部は本当にバスの働きをする伴奏の役割も半分果たしており、そこに2つの上声部が乗っかっている感覚です。
これらのバスの上に乗っている2声は、やはり独立をさせることでポリフォニーの秩序を守ることができます。例えば1小節目、ソプラノの3-4拍目は付点2分音符のAですが、このAが伸びていることを聴き続けて2小節目に繋ぎたいところなのですが、3-4拍目はアルトがスタートしますので、ソプラノのAを消してしまいがちです。このような部分はソプラノとアルトの区別をはっきりとつけ、ソプラノはきらびやかに、アルトは大人しく演奏すると良いでしょう。
全体的にとても大人しく、優雅なプレリュードですが、1箇所だけ感情的に盛り上がる部分があります。20小節目です。バスの動きを見ると、このようなバスの動きは他には無いことが解ります、 ソプラノとアルトの音型はこの1小節間で1オクターブ以上も上行します。ある種、強い喜びの表現です。