第2番 ハ短調 【プレリュード】
1巻と同様に、楽しい、舞曲風の、躍動的なC-mollのプレリュードと考えて良いと思います。故に、通奏低音のような左手の8分音符の動きは、スタッカートにしてしまって良いと思います。勿論右に8分音符が出てきたときも同様にスタッカートにして良いでしょう。さて、このプレリュードのテンポですが、難所がいくつかあり、その難所に無理がかからないテンポが良いかと思います。難所は次にあげる箇所になります。
7小節目4拍目の右手のトリル、同じく8小節目2拍目の右手のトリル。
14小節目2拍目と4拍目の右手のトリル、同じく16小節目2拍目と4拍目の右手のトリル。
トリルの処理の仕方にもよって難易度は変わってきます。しかし7小節目と8小節目のトリルは最終的に同じ音にたどり着かなければなりませんのである程度の速さは必要になります。
14、16、小節のトリルの演奏法は次に解説するとおりです。2通りの演奏法があります。1つは、14小節目の2拍目を例に取ります。この右手のH㽇を、書いてあるとおり、左手のGに合わせる弾き方にすると、表拍のCのトリルはわずか16分音符1個分の時間内に収めなければなりません。そうなると、どうしてもトリルの3つの音の最後であるCを(3つめを)、左手のAsと一致させなければほぼ不可能です。トリルの3つめの音を左手と一緒に弾いたとしても、結構な技術が必要になります。
もう1つの方法は、2拍目の表拍である、トリルとH㽇をすべて32分音符に統一してしまいます。
32分音符4つでCDCHと演奏して、左手のAs とGにそれぞれ32分音符を2つずつ合わせます。この奏法の方が遙かに楽であると思います。以下同じ場所は同様に処理します。
その他の注意点を書いておきます:
5小節目4拍目や、6小節目4拍目のような場所は拍内に右手の声部と左手の声部が分かれて入っていますね。5小節目の4拍目を例に取りましょう。この4拍目に入っている4つの音である、FEsDCは、Fが右手の声部で、EsDCが左手の声部になります。しかし普通に演奏するとこの4つの音はあたかもどちらかの手の声部の4つの音に聞こえてしまいます。そこで、この場合右手の声部であるFを16分音符1つ分よりも幾分長めに演奏します。そうすることで、左手声部のEsとオーバーラップします。オーバーラップさせることで、2つの声部として聴かせることが可能となります。6小節目、23小節目、24小節目も同じです。
12小節目、右手は3声になっています。1拍目の4分音符の長さ、1拍目裏拍8分音符のCの長さなどを厳格に守ってください。28小節目も同様です。
次に音楽的な側面について述べてみます。前半(1-12小節間)、最高音はFとなり、これは4小節目4拍目右手、8小節目3拍目右手に現れます。しかしながらこのプレリュードはC-mollから始まり、前半の最後がEs-durで終わり、後半は引き続きEs-durから始まります。従って、テンションが高まっていくC-mollの部分での4小節目のFと、Es-durに転調して柔らかなムードになる8小節目のFではキャラクターが異なりますね。故に前半は4小節目が最も音量の上がる小節になります。 後半は、Es-durから始まり、f-mollに転調し、シークエンスをたどりながら22小節目において、最高音のAsまで達し、この小節のテンションが最も高くなります。