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寺内 大輔 :《地層》

Terauchi, Daisuke:"Stratum" for piano

作品概要

作曲年:2014年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:★ 種々の作品 ★

解説 (1)

解説 : 寺内 大輔 (934文字)

更新日:2019年5月14日
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この曲の創作の出発点は,様々な様式感が混在する音楽を意図したことであった。このような意図に基づいた作品を手がけた重要な作曲家としては,C. アイヴズやA. シュニトケらが挙げられる。1980年代以降は,テープやターンテーブル,サンプラーといった録音媒体を楽器として活用することによって,過去に実在した音楽をリソースとして音楽を作る試みも増えてきた。1984年には,J. ゾーンによって,即興演奏家達がもともと持っている音楽語法をリソース(素材)とし,それをゲーム的な方法で組み合わせることで音楽を成立させる作品《コブラ》も発表されている。本作は,そうした先人たちの仕事を意識して作曲したものである。

  本作では,演奏家がそれまでに演奏したことのある(あるいは得意としている)複数の曲の断片からリソースを選択するという方法が採られているが,それは,次の3つの効果をねらいとしたものである。1つ目は,過去に実在した作品をリソースとすることによって,各リソースの持つ様式感が明確になることである。2つ目は,様々な様式による複数の曲の断片が用いられることによって,各リソースの様式感の違いが強調されることである。3つ目は,演奏家が得意としている曲をリソースとすることによって,演奏家の「その人らしい演奏」が十分に発揮できることである。初演は大井浩明氏によって行われたが,本作の性格上,大井氏のような一流の演奏家だけでなく,ピアノを始めて間もない初心者でも,数曲のレパートリーさえあれば演奏可能である。私自身も,様々な方に演奏されることを望んでいる。

  楽譜上では,各リソースのテンポや音域,用いられる音などに様々な変更を加えるよう指示されている。それによって,各リソースがもともと持っている様式感に,新たなニュアンスが付加される。また,それらのリソースは,次々と瞬時に切り替わりながら提示される。その様相は,テレビのリモコンでチャンネルを頻繁に(落着きなく)変えることにも似ている。ごく機械的に見える構造と人間的な表現とが混在していることは,本作の特徴のひとつである。また,曲の部分(一瞬一瞬)に着目して聴くのと,曲の全体に着目して聴くのでは,感じ方がずいぶん異なるであろう。

執筆者: 寺内 大輔

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