田中 修一 :舞踊曲「幽靈」
Tanaka, Shuichi:Ballet “IUREI”
作品によせて : 田中 修一 (255文字)
我が国の美学のなかには「幽玄」と「鬼拉」というものがありますが、此の作品では、鬼の心を取り拉ぐような激しさと高い格調による雄勁さを志向しました。“幽霊”の音楽手法の常套手段である、様々な打楽器を使っての効果音的な音楽という術を用いなかったのは、其のような手段では「幽玄」は模倣できても「鬼拉」の表現には到達できないと考えたからに他なりません。また、静謐なところのある静かな踊りにしたいとの木部与巴仁氏(キベダンサー)の御要望に応えるべく努めましたが、「静謐」と「鬼拉」の両立には聊かの不安を禁じ得ないのでした。