5.イワンとナターシャ
この手の、不協音の多い曲を仕上げる時、重要ことはメロディーラインをはっきりと聴かせることです。一応、どの音が和声音でどの音が非和声音であるかを知っておくことも必要かもしれません。調性はG-mollで、形式はABAです。そしてくれぐれも譜読みの間違いには気をつけてください。
最初のAセクションは1-8小節間です。歌と考えても良いと思います。従ってある程度のルバートはあっても良いのですが、基本のテンポを少しだけ崩す程度に留めておきます。Bセクションでは、9小節目のメロディーラインと、10小節目のメロディーラインは別の素材と考えます。9小節目は歌のように、10小節目は器楽的に突然雰囲気を変えます。11小節目で再び歌に戻り、12小節目で再び10小節目の素材が入り込み、その素材は17小節目のピークポイントまでクレシェンドして行きます。
17小節目のピークポイントは、下の声部を出すか、右手の素材を出すか、は奏者に委ねて良いと思います。個人的には、15小節目から左手の声部を大きくすることが理にかなっているようにも感じます。Bセクションは22小節目まで。
23小節目から再びAに戻ります。最初はFis-mollから始まり、次にC-moll、最後にG-mollに戻ります。この3つの調は、それぞれ雰囲気を異らせてください。
次にメロディーのシェーピングについてお話しします。1小節目を例にとります。これはこの曲の主要素材ですが、普通にメロディーだけを弾いてみると3拍目のGesは1拍目のDよりも小さく弾きたくなります。しかし彼の書いているクレシェンドは3拍目のGesを最も大きくと書かれています。左手を活用してクレシェンドをかけ、3拍目をピークにしてください。3拍目を弾いた時、バランスに注意をして、Gesが1番聴こえるようにします。