1.イワンは歌う
Andantinoというとアンダンテよりも速くと考える人が多いのですが、実際の意味は非常に曖昧で、アンダンテよりも遅くという意味もありうる厄介な言葉です。このAndantinoが表示されていた時、奏者は多くの状況を見てテンポを判断しなければなりません。この曲もAndantinoですが、筆者の個人的意見を言わせて頂ければ、Andanteよりは適度に速いと思います。あまり遅すぎると、歌のラインを繋ぐことが難しくなってくるからです。
この曲を演奏するにあたって、ヒントとなりうることは、「自由に歌うこと」に尽きます。よってテンポは揺れ動きます。メロディーラインはもともとcantabileと書いてあります。奏者はこの曲のメロディーのみを単旋律で弾いてみたり歌ってみたりしてください。そうして自由に歌うことができるはずなのですが、伴奏形が4分音符でコンスタントに書いてあるため、左手が一緒になると、奏者はまるでメトロノームのように弾いてしまうことが多々あります。そうならないように注意します。メロディーラインは3-4小節目とか、7-8小節目の右手の8分音符が重たくならないように注意し、逆にテヌートマーキングが書いてある、音価の大きい音符はたっぷりと伸ばします。
1つ目の区切りは、1-17小節間で区切ることができ、1-17小節間は4つのフレーズに分けることができます。
1 2-5小節間 2 6-9小節間、3 10-13小節間、4 14-17小節間です。この4つのフレーズのムードはすべて異なります。同じように弾かないように注意します。
18小節目からは2小節目と同じフレーズが同じ調で繰り返されますが、この時、右手のメロディーCと、左手の伴奏の上声部Cは全く同じ高さに位置します。左手はこのCを1の指が担当しますので、ついつい大きくなってしまい、右手のメロディーと混同して聴かれてしまいます。左手のCは可能な限りpppにします。 また、この曲は「自由に」と言いましたが、ritやa tempoのマーキングがない場所でritをかけたりはしません。せいぜいbroading(ブローディング=ある箇所全体をゆっくり目に大げさに強調すること)する程度です。よく、この曲の最後にritをかける人がいますが、何も表示がありません。少し衰退はしますが、極端なritは避けてください。
そしてこの曲にはペダルが必須です。小さなお子様が演奏する際も、音楽的にペダルは欠かせません。エクステンションやアシストなどを使ってペダルを入れるようにします。