冒頭はゆっくりで、6小節目から速くなり、25小節目で再び遅く、30小節目で再び速く、そして最後、46小節目から再び遅くなって終わる楽章です。筆者の見ている楽譜には、Presto、Grave、とテンポの速い遅いをこの2つの単語だけで書かれておりますが、この楽章の演奏のヒントとしては、これら、遅くなったり速くなったりする楽章を一体化させることです。
やみくもに突然速くなったり突然遅くなるだけでは、曲の流れがバラバラで、多くの曲をたて続けに演奏しているようにきこえてしまいます。それを避けます。
「遅く」から「速く」なるのはそこまで違和感はありません。例えば、5小節目までゆっくりで、6小節目から突然速いテンポになることは自然な流れとして捉えることが出来ます。問題は、速いテンポから遅くなった時の話になります。
24小節までprestoで進み、25小節目で突然Graveを迎えますが、コツとして、速いテンポで得たテンションの高さを一瞬にして消さないようにします。24小節目と25小節目は25小節目を若干速く弾くことで、24小節目からのつなぎが自然になります。24小節目の2拍の速さを、次の25小節目で1拍分を8分音符に受け渡すと、25小節目はかなり速いテンポで弾くことになりますが、最初は速くても構いません。26,27,と徐々にテンポを遅くしていきます。
人間の感情とは、そうそう瞬間的に変えられるものではありません。テンションの高まりを一瞬にして消さずに、自然な流れで衰退させるように心がけます。