クレメンティ :第5番(ソナチネアルバム第11番) 第1楽章 Op.36-5 ト長調

Clementi, Muzio:No. 5 Mov.1 Presto G-Dur

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナチネ
総演奏時間:4分30秒

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1388文字)

更新日:2019年12月5日
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2/2拍子でprestoなので、かなり速いかもしれませんが、4分音符が150位で良いのではないでしょうか。この1楽章のムードや情景、描写としては、忙しい場所での楽しい会話などと例えても良いでしょう。筆者は、この楽章をユーモアたっぷりの会話だと感じています。もちろん、それ以外でも全く構いませんが、喜怒哀楽で言えば、楽しい と思って頂いて良いと思います。故に、極端に遅かったり、重かったりする演奏は、楽しさが半減してしまいますので、気をつけます。

アーティキュレーションをきちんと守って、軽やかな演奏を目指してください。

さて、この曲の最も重要な音は装飾音だと筆者は考えます。ちなみに、この曲の装飾音を最初から最後まで全部外して弾いてみましょう。なんとも味気ない、ただの会話になってしまいますね。この装飾音こそこの曲の最も重要な要素です。この装飾音があることで、言葉がウイットに富んだ、あるいはおしゃれな、あるいはふざけた、コケティッシュな、あるいはひねくれている、あるいはパンチの効いた話、など普通とは異なった会話やキャラクターになると考えます。装飾音があるとないとではどのような感じ方に違いがあるか、生徒さんと一緒にお話をしてみましょう。

しかしながら決して深刻や重たい会話ではありません。実に巧妙に、流暢に、お話しをする感じでしょうか。prestoでもpiano dolceと最初に書いてありますね。左手を可能な限りppにすることで軽快さが出てきます。

この装飾音の他、例えば4小節目の1拍目、右手の最初の音をご覧下さい。これはCisですが、和音はGHDで構成されていますので、Cisは所謂非和声音です。非和声音というのは、通常、裏拍や弱拍に現れる事が多いのですが、クレメンティーはこの非和声音をわざわざ、1拍目の表拍に書いています。しかもアクセントまで付いていますね。これも普通とはちょっと違ったお話しになりますね。そして8小節目、1拍目の右手、最初の音にスフォルツアンドが付いていています。この音に方向を定め、5小節目から徐々にクレシェンドしても良いのではないでしょうか?8小節目の左手は、3連符、アルペジオの上行形と下行形の両方ですね。楽しさの描写です。

1ー15小節間を一区切りとし、新たなセクションが、16小節目から始まると考えます。pから始まりますが、18小節目からクレシェンド、そして22小節目の全音符、Aに方向性を定め、20小節目から始まる左手のオクターブを徐々にクレシェンドして22に到達させます。24小節目でこのセクションは終わります。新たなセクションが24小節目から始まります。

これらの各セクションは、歌であるかも知れませんし、楽器かも知れません、各セクションのムードを生徒さんと話し合ってみましょう。例えば、24小節目から左手のメロディーはテノール歌手、28小節目からの左手のメロディーはバスの歌手というイメージでも良いでしょう。

展開部、短調になって一瞬ムードが変わりますが、39小節目で再び明るくなります。そして、46ー50小節間のクライマックスを迎えます。クレメンティーらしい力強さです。

再現部、62小節2拍目裏拍より、66小節目まで、クレメンティーのマジックです。借用和音を使い、転調と見せかけておいて、元の調に戻ります。終始楽しさでいっぱいの曲です。

執筆者: 大井 和郎
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