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クーラウ : ソナチネ第3番 (ソナチネアルバム第3番) 第1楽章 Op.20-3 ヘ長調
Kuhlau, Friedrich : Sonatinas No.3 mov.1 Allegro con spirito F-Dur
作品概要
解説 (3)
楽曲分析図 : 上田 泰史
(12 文字)
更新日:2018年3月15日
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楽曲分析図 : 上田 泰史 (12 文字)
譜例提供: 音楽之友社
【概要・演奏へのヒント】 : 恩田 結衣
(2056 文字)
更新日:2022年6月24日
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【概要・演奏へのヒント】 : 恩田 結衣 (2056 文字)
フリードリヒ・クーラウ(1786-1832)は、ドイツ生まれのピアニスト、作曲家である。
亡命先のデンマークで音楽家として大成し、ピアノ学習者であれば誰しもが経験する、「ソナチネ」を数多く残している。
《3つのソナチネ Op.20》は、その中でも、特に演奏される機会の多い作品である。
作品のジャンルは、ピアノ曲だけでなく、室内楽曲や協奏曲、歌曲、オペラまで、多岐にわたっている。
第1楽章
ヘ長調、4/4拍子、Allegro con spirito(活き活きと、速く=快活に)
構成を大きく分けると、提示部→展開部→再現部となっており、ソナタ形式として解釈することができる。
穏やかであたたかく、懐かしさや、包容力をも感じるような楽章である。
【提示部】
ヘ長調の主和音が響き、第1主題が登場する。冒頭部分は、まだどこへ向かうか悩んでいるように感じるが、大きく骨組みをとらえると、Ⅰ(1~4小節)→Ⅴ₇(4~8小節)→Ⅰ(9小節~)となっており、調性を明確に提示している。
第16小節からは、主調であるヘ長調から見た平行調にあたる、ニ短調の響きも織り交ぜながら、第2主題へと橋渡しをしていく。
第2主題は、ヘ長調の属調である、ハ長調へと転調し、提示部を締めくくる。第1主題は、右手のメロディーと、左手の伴奏で軽やかに流れていたが、この第2主題では右手と左手が対話をするように音楽を運んでいく。
左手は、一段ずつ慎重に階段を上るような上行形、一方の右手は、大胆なオクターブでの跳躍と、迷いを感じさせる下行形からなり、向かった先の第24小節では、右手の跳躍がこれまでのオクターブから12度へと広がりを見せ、左手の和音と調和しながらコデッタ(小結尾部)へと向かう。
第27小節からのコデッタは、第2主題と同じく、ハ長調で奏される。左手の中音域での分散和音を中心に、右手が16分音符で高声部と低声部を行き来する。その右手に合流するかのように、第31小節からは左手にも16分音符の同じ音形が現れ、展開部へと移り変わる。
【展開部】
提示部とは一変して、3連符での流れるような和声進行が印象的である。彷徨うように経過し、第41小節で変ニ長調へと到達する。その後、第1主題の音形を用いて、変ロ短調、へ短調と転調を繰り返す。第51小節では低声部に、主調であるヘ長調の属音、C音が響かせられ、再現部へと向かう。その後の第56小節からは、右手のオクターブの分散に、左手で様々な和音を組み合わせながら調を模索しているような経過的な部分である。最後は、ヘ長調のⅤ₇→Ⅰに解決し、再現部へと到達する。
【再現部】
様々な調を経て、たどり着いた再現部は、主調のヘ長調へと回帰する。
第1主題の再現では、途中、一時的にⅡ調にあたるト短調を経過するが、すぐに主調へと戻り、第2主題の再現へと続く。第2主題が提示部と同じ規模で再現され、コーダ(結尾部)へと向かう。
コーダは提示部と同じように、細かい動きでの左右の掛け合いを経過する。第104小節主調であるでヘ長調のⅤ₉の和音が響くと、その後は第1主題の音形を印象付けて、最後はヘ長調のあたたかい和音で、第1楽章を締めくくる。
【演奏へのヒント】
スラーとスタッカートが細かく書き分けられています。よく自分の耳で聞きながら、弾き分けましょう。大きいフレーズを意識して、停滞しないように気を付けましょう。
左手に、スラーのかかった重音(2つの音を一緒に弾くところ)がたくさん出てきます。ペダルに頼りすぎず、指だけでもなめらかに弾けるように、左手だけを取り出して、ゆっくりの練習をしましょう。
第1主題は、右手がメロディーを担当していますが、左手でしっかり音楽の流れを作り、右手を支えてあげることも大切です。右手の音の流れに沿って、左手にも表情をつけて演奏しましょう。
第2主題は、右手とお話しするように、左手にも16分音符の細かい動きが登場します。細かい音符は速くなりやすいので、1音1音に言葉がついていると思って、丁寧に弾きましょう。
展開部は、いろいろな調に変身していますね。それぞれの和音の響きを耳で確認して、全部が同じにならないように工夫してみましょう。この部分は、特に右手の8分音符が転がりやすいところです。音楽が盛り上がるにつれて、前のめりになっていかないように、気を付けましょう。
~番外編~
「ヘ長調」にはどんなイメージをもちますか?色で例えると、何色だろう?
ピアノだけでなく、他の楽器もイメージしてみましょう。ホルンのような、あたたかい響きをイメージすると良いでしょう。いろいろな「ヘ長調」の曲を聴いてみるのもいいですね!
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827) 《ヴァイオリンソナタ 第5番 Op.24》「春」 第1楽章
ロベルト・シューマン(1810-1856) 《子供の情景 Op.15》より 「トロイメライ」
ピエトロ・マスカーニ(1863-1945) オペラ《カヴァレリア・ルスティカーナ》より 「間奏曲」
演奏のヒント : 大井 和郎
(505 文字)
更新日:2024年6月17日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (505 文字)
このソナチネ第1楽章を演奏するにあたり、是非とも学習者の皆様にはして欲しいことが1つあります。それは是非オペラを鑑賞して欲しいということです。5分でも良いです。何故かというと、このクーラウのソナチネがオペラの要素を持っていて、この楽章全体を、「歌劇」と考えて理解をする必要があるからです。その内容は極めて楽天的です。楽しく、わくわくするような気持ちで弾かなければなりません。
学習者は、提示部を例えば4つのセクションに分けて、それぞれのセクションにおいて、どのような場面であるか、そのセクションの中にあるいくつかのフレーズはそれぞれどのようなムードであるか、どのような気持ちであるかを察しなければなりません。例えば16~19小節間、軽い文句かもしれませんし、厳しい発言かも知れません。16~17小節間の人に対して、18~19小節間は別の人がそれをなだめているとか、希望に満ちた説得をしているとか、そのような場面とします。
20小節目以降、気持ちは徐々に高まり、わくわく感があり、24小節目において、気持ちが頂点に達するようなイメージです。
各場面、ストーリーを想像してみてください。そして楽しく、劇的に弾いて下さい。
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