タイトルの下に”Croisement de la main gauche”=「左手の交差」とこの曲の課題が書かれています。交差する左手の音はカッコーの鳴き声です。後ろの音が長くなってしまわないよう気をつけ、よく澄んだ音で響かせましょう。
また、左手の交差の他、この曲では左右の対話が非常に重要な課題となります。冒頭部、左手から始まるメロディは、短2度、短3度の動きを中心とする陰鬱な雰囲気ですが、3小節目から応答とする右手のメロディも、減4度の不協和音程で始まり、続くメロディは行ったり来たり右往左往するようなメロディの進行で、まるで森の中で道に迷ったかのようです。左右のメロディにはそれぞれどんな特徴があるのか、音程や動き方に着目しながら演奏しましょう。左右のお話は、不安気で、どうやら暢気なお話ではないようです。それとは無関係に、カッコーの鳴き声は、森のあちらこちらから響いてきます。