アッラ・ブレーヴェの急速なロンド形式。各エピソードが回帰するためソナタ・ロンドに近い形式になっているが、回帰したエピソードの間のロンド主題は部分的に省略されている。
楽章冒頭から息つかぬようにカデンツまで続くロンド主題の旋律が、第2楽章の朗らかな雰囲気をかき消す。最初の主題提示から第1エピソードまでは同じ音形が畳み掛け、しまいには断片的な動機の連続になってしまうが、これも音楽が切迫感を帯びる原因だろう。
個々のエピソードには、op. 23の先行する楽章を思い出させる楽想や、この時期のベートーヴェンの他の作品に通じる特徴も指摘できる。すなわり、例えばこのロンド主題では、ヴァイオリンが同じ音を伸ばしてピアノの背景を成し、後楽節になって動きを増すという点に第1楽章とのつながりが見られる。また、ピアノとヴァイオリンが半小節ずつ交替で音を鳴らす第2エピソードは第2楽章を想起させる。長大な第3エピソードはコラール風の主題があたかも変奏曲のように変奏されていくが、楽章の中心たるここで初めてヴァイオリンが先に旋律声部を担うため、op. 24 と同じくヴァイオリンの重要性が確認されると同時に、ピアノとは違う響きによって旋律が際立って聞こえるだろう。
また第1エピソードの最後に現れるレチタティーヴォ風のAdagioや、第2エピソードが再現する直前で期待される和声解決を省略してしまう休符といった、音楽の流れを突然に中断する要素は、時期の近いピアノ・ソナタ集op. 31にも見られるベートーヴェンの作曲上の特徴である。