この曲はアダージョよりも速いテンポで演奏されることもありますが、いずれにせよ、多くのストレッタが出てきて、心情的にとても「落ち着かない、不安な」気持ちの表現と考えます。

4声体のフーガで、g-mollから始まるものの、多くの調に転調します。それが更に落ち着きを感じさせない要因となります。そして最後にはc-mollのピカルディー終止となり、テンションは高いまま終わります。落ち着きを感じさせない=不安や悲しみの表現と理解します。

このフーガには、カデンツが3箇所あります。最後のカデンツを除けば2箇所になりますが、1つ目は6小節目1拍目、2つ目は11小節目1拍目になります。

カデンツまでの道のりをご覧頂ければ、声部がどんどん増えてきて、ストレッタが登場し、テンションが高まったところでカデンツになる事がわかります。そして一度カデンツが終わると、声部は2声に減り、そこからまた次のカデンツに向かって徐々に声部が増えていきます。

故に、強弱的には、カデンツまでを徐々にクレシェンドをかけ、カデンツが終わったら再びpから始めると理にかなった流れになります。