朧月夜(1914) 茶摘(1912) 紅葉(1911) 雪(1911) 夕焼小焼(1923)
1979年、東京放送児童合唱団(現・NHK東京児童合唱団)から委嘱を受け、文部省唱歌から四季にあわせた4曲を童声二部合唱と2台ピアノのために編曲したのがオリジナルである。 文科省が編纂した唱歌集には様々なものがあるが、選ばれた4曲は明治44年から大正3年にかけて発表された尋常小学唱歌の第一学年用~第六学年用のなかに含まれるもの。5曲目の〈夕焼小焼〉のみ四季と関連がなく、更には文部省唱歌にも含まれない楽曲であるのは、本来はアンコール用に編曲されたものだからだ。東京放送児童合唱団による初演は、指揮を古橋富士雄、ピアノを作曲者自身と田中瑤子が担った。 その後、1981年3月に同合唱団がヨーロッパ演奏旅行をするにあたってピアノ1台伴奏による版が作られている。
この曲がより広く歌われるようになったのは、1983年3月17日に混声四部合唱版が初演され(田中信昭指揮の東京混声合唱団。ピアノは1979 年と同じ)、そのバージョンが1988年に音楽之友社から出版されてからのことだ。それ以外にも、1987年には三善自身による指名で弟子の 鈴木輝昭が手がけた管弦楽伴奏版、2004年に三善自身により男声合唱版(ピアノは2台版、1 台版のどちらでも可)が仕立てられている。またオリジナルの童声合唱版が女声合唱で歌われる場合もあり、三善編曲のなかで最大のヒット作と言えるだろう。
2台ピアノ版は三善と共に初演を務めたピア ニスト田中瑤子のため、1986年の晩夏に編み直された。いずれの曲も合唱版の構成に沿いつつ、〈雪〉と〈夕焼小焼〉の一部に合唱版にはないR.シュトラウス《バラの騎士》における「銀のバラ」のライトモチーフのような復調的なハーモニーが追加されている。そして〈夕焼小 焼〉のエンディングは合唱版では2種類のバージョンが準備されているが、2台ピアノ版では徐々にディミヌエンドしていく方のみが採用されている。