平吉 毅州 :ピアノのための《モノドラマ》
Hirayosi, Takekuni:Mono Drama
解説 : 長井 進之介 (420文字)
1969(昭和44)年、《交響変奏曲》にて第18回尾高賞を受賞した翌年に作曲された作品で、 ピアノ独奏曲でありながら、対位法を駆使した複雑な音同士の絡み合いや、厚い和音の多用などによって、管弦楽作品の響きを思わせる書法を随所に見出すことができる。若き平吉の実験的な要素や情熱が力強く反映された作品であり、明瞭さや甘美さよりも、旋律や和音の“配 置” にこだわりを見せる楽曲となっている。それぞれの楽想や動機、果ては音のひとつひとつが有機的な関連性をもちながら展開し、心情や情景といったものを様々に演奏者に想像させながらドラマを形成していくこの楽曲は、前述した通り、奏される旋律にはわかりやすさは与えられていないが、平吉作品ならではの “うた” が巧みに散りばめられているのは確かであり、 奏者はそれらをどのように響かせていくか、そして旋律同士がどのように関連しながら展開していくか、ということを絶えず考えながら奏していかなければならない。
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