作品概要
解説 (2)
演奏のヒント : 大井 和郎
(1039 文字)
更新日:2023年5月15日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (1039 文字)
この曲の演奏のヒントは、ペダリングにあります。
筆者が勉強不足のため、今筆者が見ている楽譜に書かれいるペダルマーキングは、シャミナード自身が書いたものであるかどうかは確かでは無いのですが、そうであることを前提でお話を進めていきます。
これは「歌」であることは間違い無いですので、歌のように演奏します。加えて冒頭には、bien chante と書かれてあり、括弧して、very flowing と書かれていますが、この括弧の中の英文を訳してしまった人は、恐らく、「とても流れるように」という訳に至ったのではないかと思います。実際、bien chanteとは、フランス語で 「たっぷり歌うように」 という意味です。少し意味が違ってきてしまいますね。
ここでは、フランス語の、bien chanteを「たっぷり歌うように」として考えていきます。
さて1小節目を例に取ります。明らかに右手のラインは歌の部分ですのでこれはとてもわかりやすいですね。問題は左手の休符にあります。この休符、完全にサイレントになる休符でしょうか?そうだと仮定して演奏してみるとよくわかりますが、実に素っ気ない、無機質で無感情で機械的な演奏となってしまうことがわかりますね。
これらの休符はジェスチャーの休符で、左手を宙に浮かせるための休符だとお考え下さい。つまりは、このペダリングの通りに従えば、少なくとも1小節目はこの小節一杯までペダルを離しません。2小節目も同じです。ただし2小節目にはペダルを離すアステリスクのマーキングがありますね。これは右手の順次進行下行形の H A G がペダルを踏み続けることによって生じる濁りを避けるためです。しかしだからといって2拍目で急にサイレントを作る必要もなく、ある程度、1拍目のペダルは2拍目に食い込んでも、濁りが気にならない程度のタイミングで足を離せば問題ありません。
3小節目は1拍目と2拍目の和音が違いますのでペダルは2回踏むように書かれてあります。これはその通りに守って下さい。4小節目も2小節目と同じです。
以降、この親切すぎるペダルマーキングは、下手をすると本末転倒になりかねない音楽になってしまうので注意して下さい。このマーキングを付けた人は、とにかく濁りを過剰に心配していますが、異なった和音でない限りは、ペダルは踏み続けて下さい。
曲そのものがロマンティックな歌の曲です。伴奏の部分が突然空っぽになってしまうのは、全ての雰囲気を台無しにしてしまいます。ご注意下さい。
演奏のヒント : 大井 和郎
(578 文字)
更新日:2023年7月17日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (578 文字)
メロディーラインが歌であることは明らかですので、歌手のようにたっぷり歌うことは必須なのですが、理論的に考えることで助けになる事もあります。
1~8小節目までを一括りとするのであれば、この中に3つのフレーズが入ると考えます。1つ目は、1~2小節間、2つ目は3~4小節間、3つ目は5~8小節間の3つです。注目して頂きたいのはそれぞれのフレーズの最後の音です。この3つのフレーズの最後の音は全て和音の解決音になっています。
1~2小節間はGHDFというC-durで言えば属7の和音ですね。1~2小節間では、1小節目2拍目のEが非和声音で、このEは7度も跳躍して達する音ですのでテンションはとても高く、感情的な音です。それが2小節目でDに降りて来て、このDが非和声音の解決音になります。故に、DはEよりも弱く弾いて下さい。
3~4小節間も同じで下属和音から主和音に降りてきます。メロディーラインはAからGに降りますので、これもGを弱く弾きます。
3つ目のフレーズで、7小節目は借用和音です。V7/V と考えます。この借用和音は、8小節目でV に解決されますので、この時のメロディー音Gは、前のAよりも大きくならないように注意します。
たったこれだけのことで曲が美しくなります。これ以降、やはりAセクションの全てのフレーズの終わりは、解決音ですので、同じマナーで進んで下さい。
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