ヒナステラ :クリオージョ舞踏組曲 Op.15
Ginastera, Alberto:Suite de danzas criollas Op.15
解説 : 高木 直樹 (415文字)
曲のタイトルにある「クリオージョ」とはアメリカ⼤陸⽣まれの⽩⼈のことを指す⾔葉で、ヒナステラもイタリア系移⺠の⼦どもとしてアルゼンチンで⽣まれたため、彼⾃⾝もクリオージョだった。この曲はヒナステラがアメリカ合衆国留学中の1946 年に作曲され、留学中に他⽂化にふれることで感じ、考え直した⾃⾝のアイデンティティを、作品を通して表現しようとしたものである。
曲は全5曲で構成され、イタリア系アルゼンチン⼈のヒナステラらしくベルカントのような歌曲⾵の旋律で始まり、ヒナステラが得意とした舞曲⾵のリズム、メランコリックな旋律、遠くの記憶を呼び起こすような精神世界と⾳楽が進み、最後はアルゼンチンのマランボのリズムを⽤いた舞曲とアルゼンチンの民謡を思わせる旋律が出てくるが、単にリズムや旋律の借⽤ではなく、彼⾃⾝の感性を取り⼊れた変拍⼦を⽤いて曲を盛り上げる。Molto sforzando(強烈に⾳を強調して)の指⽰とともに曲は終結する。
解説 : 川端 美都子 (1094文字)
ヒナステラが米国滞在中の1946年に作曲した作品。「クリオージョ」を定義することは非常に難解であるが、ヨーロッパとの繋がりを前提としたアルゼンチン固有のもの、が説明の一つとして可能であろう。ヒナステラは同作品を、初期の作風から次の段階に移る過渡期にあたると仄めかしている:「すべての旋律とリズムはアルゼンチン的だが、新しく、個人的で、想像力豊かな方法で用いられている。まるでフォークロアの夢に着想を得たかのように。」
第1曲目では、地方舞踊音楽のサンバのリズムに乗せて、右手にクラスターが現れたり、和音進行にジャズ的要素が見受けられたりする。この時期のヒナステラの作品では、旋律のどこかで同じ音が繰り返し鳴らされるのが特徴となっている。本作品でも、ゆったりとした旋律のどこかで、常に様々な音の高さでD音が鳴り響いている。
第2曲目は、ガトの溌剌としたリズムが印象的である。冒頭から右手に現れるクラスターについて、楽譜には手の平で演奏する指示が明記されている。また、本曲はABABAという構成で書かれているが、これはガトのコレオグラフィー(ABCBCB)とも類似している。
第3曲目は、下行する美しい旋律と11/8拍子(6+5拍子)が特徴的である。ヒナステラが「主観的で、完全にクリオージョ的というわけではない」と述べているように、どの地方舞踊音楽の旋律的、及びリズム的要素が用いられているのか特定できるわけではない。ヒナステラのこだわりであり、かつ演奏者の聴かせどころは、後半に目まぐるしく変化するテンポとそれに伴う表現力であろう。
第4曲目について、ヒナステラは「パンパに着想を得た詩的な夜想曲」であると説明している。サンバを思わせるようなリズムや、ギターの開放弦と同じ音列、またそこから音程がずらされた音列が現れる。夜の静寂に包まれたパンパに、ガウチョがつま弾くギターの音が響き渡るような幻想的な作品である。
第5曲目は、ヒナステラが「昇華されたマランボのようなもの」と語るように、力強く、かつ遊び心に満ちた作品である。martellato(叩きつけるようなタッチで)という表記とともに、拍子が、6/8、5/8、3/4、7/8拍子と目まぐるしく変化する箇所は、まるで様々なガウチョの幻影を、息つく暇もなく見せられているかのようである。続くコーダでは、テンポは更に加速し、かつ打楽器的なエネルギーに満ち溢れている。マランボのリズムの間に、ミロンガ・パンペアナのリズム(3+3+2の組み合わせ)が組み込まれることで、ガウチョがパンパを馬で駆け巡る経験に聴衆も引き込まれていくような作品となっている。
アダージェット ピアニッシモ
総演奏時間:2分00秒
動画1
解説1
楽譜0
編曲0
アレグロ ルスティコ
総演奏時間:1分00秒
アレグロ カンタービレ
総演奏時間:1分30秒
カルモ エ ポエティコ
スケルツァント-コーダ:プレスト エド エネルジコ
総演奏時間:2分30秒
クリオージョ舞踏組曲 スケルツァント-コーダ:プレスト エド エネルジコ
クリオージョ舞踏組曲 アダージェット ピアニッシモ
クリオージョ舞踏組曲 アレグロ ルスティコ
クリオージョ舞踏組曲 アレグロ カンタービレ
クリオージョ舞踏組曲 カルモ エ ポエティコ
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