<ハ短調>
1 このエチュードの難しいところは、メロディーラインと伴奏部分が距離的にはかなり近い位置にあるにもかかわらず、伴奏部分の音数が旋律に比べて極端に多く、結果メロディーラインが伴奏によってバランスを失い、聴き取りづらくなってしまうところです。そのため、左手は最終的にppで演奏する事になるのですが、そうすると次の典型的な問題が発生します。
1 粒が揃わなくなる
2 音が抜ける 等の問題です。
左手の16分音符は、時に右手を使ってリレーを行わなければなりませんが、それ以前に、左手だけを考えた時でも「左手の粒を揃える事」が大前提になります。
このエチュードは、横に流れるように弾かなければならなく、そのためには拍を感じさせるような、縦割りの弾き方にならないように注意します。結果、左手はppで、粒を揃えなければならず、音が抜けてしまうような危険な箇所は多くありますので、以下、練習方法です。
最初から音楽を作ろうとせず、ハノンのように、全ての音を強めに、テンポを遅く、マルカートではっきりと練習します。粒が不揃いになってしまう場合は、ドホナーニやピシュナーなどの独立練習方法を取り入れてください。練習時はバランスやダイナミックのことを一切考えず、左手が全ての音をがっちりと掴める事を目指してください。そのような地道な練習を行う事により、ppに下げ、インテンポにした時に抜ける音を無くす事ができます。
2 16小節目から18小節目まで、左手は大きく跳躍します。しかし跳躍が大きくなるほど(例えば18小節目のように)、大きな音で弾いてしまいがちですが、強弱記号はpとなっています。この3小節間、左手は決してオンタイム(テンポどおり)には行かないで、無理な素早い跳躍をせず、十分な時間をとってください。
3 このエチュードのメロディーラインは基本的に単旋律で書かれていますが、オクターブに変わる箇所が数箇所あります。どんな曲にも言える事ではありますが、メロディーがオクターブになった途端に硬く聞こえてしまうのは、音量が大きすぎるからです。オクターブの音量は半分に落として硬さを取ります。10小節目は2拍目からオクターブに変わりますね。しかしこれは突然大きくするsubito f ではなく、9小節目でcrescendoをかけ、単旋律とオクターブを一体化させるように弾いてください。
4 音楽的側面の話をすると、このエチュードは典型的なアレンスキーのカラーがとても出ています。もしもこれが初めてのアレンスキーの曲として弾くなり、聴くなりする場合は、その他のアレンスキーの作品も多く聴いてください。彼の言語が理解できるようになり、曲がより一層納得のいくものとなります。