このプレリュードの注意点はとにかく伴奏とメロディーラインの音質を異ならせることに尽きます。伴奏部分の音符の多さはメロディーラインの何倍もの数であり、どうしても普通に演奏すれば伴奏の方が大きい音量となり、メロディーラインを消してしまいます。そうならないためには、伴奏部分をppで弾けば良いのですが、そこがこのプレリュードの難しいところで、下手をすればエチュードにもなり得る程難易度の高いプレリュードです。
そこで今回はこの左手(主に)の伴奏部分をどのようにすればppで演奏できるかをお教えします。ppで弾こうとするとどうしても音が抜けたり、ムラができたり、粒ぞろいが悪くなったりします。以下の練習方法でその問題が解決できます。1小節目の冒頭左手の、AF と FDのペアを例に取ります。
AFは4-1、FDは5-2,の指使いとします。その上でのお話になります。
1 5の指でFを押さえ、伴盤から離さない状態で、AF と D のトレモロを練習します。
2 1の指でFを押さえ、伴盤から離さない状態で、DF と A のトレモロを練習します。
3 1と5でFのオクターブを押さえ、伴盤から離さない状態で内声のD と A のトレモロを練習します。
4 4と2で、AとDを押さえ伴盤から離さない状態で 外声のFのオクターブのトレモロを練習します。
5 5と4で、F とAを押さえ、伴盤から離さない状態で、FとDのトレモロを練習します。
6 1と2で、FとDを押さえ、伴盤から離さない状態で、AとFのトレモロを練習します。
このような作業を行っていくと、上腕筋が張ってくる感触があると思います。そうなれば、効果が現れているという事になります。以上のエクササイズを実践した後に普通に演奏すれば、格段に楽になっているはずです。
7小節目、3拍目のトレモロは指が届かない人が殆どだと思いますので、上声部は右手で取るようにします。
この曲の描写は人それぞれとは思いますが、悲しみ、寂しさの表現であることは確かだと筆者は感じます。多くの思い出が交互に頭の中に蘇る描写でもかまいません。