このプレリュードを演奏するにはいくつかのヒントがあります。
1 メロディーラインを独立させること
メロディーラインの10度下には常に副旋律があります。左手の親指が担当するからか、この副旋律と主旋律(メロディーライン)が同じ音量になりがちです。メロディーラインははっきりと、副旋律はppでぼやけた感じの音色を出すことで、メロディーラインがはっきりとしたボーカルラインとなり、きれいなバランスを保てます。まずそれを意識します。
2 メロディーラインは歌の部分として扱う
カンタービレとして扱います。例えば5小節目、1拍目のDisから2拍目のAisに飛ぶところ、ピアノならさっと飛ぶことができますが、歌の人達はある程度の時間をとってAisに達しますので、それを真似ます。高い跳躍の音に急いで飛び込まないようにします。あるいは、ルバートをかけ、自由に演奏するようにします。伴奏部分は切れ目無く音で埋め尽くされていますので、どうしても止まらずに先へ先へと進みがちになるのですが、ritと書いてある部分以外でも時間を取りたいところは自由に時間を取って下さい。その方が、歌のラインとしては自然な形になります。
3 ペダルに工夫をする
2つの異なった和音をペダルを踏み続けることで濁らせてしまうような事はしませんが、例えば10-11小節間、夢のように消えていく部分では、ソフトペダルを使ったり、あるいはペダルを踏み続けることで多少の濁りを故意に生じさせ、ぼやけた空間を作ることもできます。18小節目のピークに達したら、そのままペダルを踏み続け、19-20小節間を演奏しても可能だと思います。