ブルクミュラー(ブルグミュラー) : 18の性格的な練習曲 風の精 Op.109-15
Burgmüller, Johann Friedrich Franz : 18 Etudes de genre (faisant Suite aux Etudes faciles op. 100) Les Sylphes Op.109-15
作品概要
解説 (2)
演奏のヒント : 大井 和郎
(1853 文字)
更新日:2022年11月15日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (1853 文字)
音楽的な側面での注意1
この曲には、いくつかの素材があり、それぞれがキャラクターを持っているので、それらは一貫させたいところです。例えば、1小節目、右手の3連符+8分音符は、leggieroで演奏し、最後の8分音符がスタッカートになっています。このことから、この素材は、軽やかに演奏しなければならないと仮定します。そうしたときに、例えばペダルによってこのスタッカートが失われたりしてしまうと、本来の素材のキャラクターを損ないますので、この3連符+8分音符が出てきたときは、ペダルを使わないようにする 等、各素材をリスペクトすること。これが1つです。
ところでこの曲はABA形式で書かれていますが、一応お伝えしておくと、
A 1~40
B 41~68
A 1~40
になります。
ところで、左手の伴奏はワルツを思わせるような軽快な3拍子の伴奏になりますが、バスの音、つまりは1拍目の音が付点4分音符で書かれていることは既にお気づきだと思います。ところが、これが一貫してなく、時に通常の8分音符で書かれている小節がある事はお気づきでしょうか?Aセクションで、27小節目、31小節目がそうですね。何故この2小節はバスが付点4分音符で書かれていないのでしょうか?
理由は、付点4分音符分、指でのばすことが出来ないからです。バスの1が低い音にあるため、2拍目と3拍目を弾くにはバスから指を離さなければなりません。この2小節は、バスを指で押さえておくことが出来ないため8分音符で書かれています。
これを別の言葉で言うのであれば、バスを指で押さえておいても2拍目と3拍目が弾けるところは押さえておいて欲しいという作曲家のリクエストと考えます。
仮に、ペダルで1小節間ペダルを踏み続ければ、何もバスを指で押さえておく必要がなく、故に、結果的に、ペダルを使わず、バスは指でのばし、2拍目と3拍目の8分音符は短く切れという事なのです。12小節目とか、24小節目のように、右手はレガートで弾く場合も、ペダルに頼らず、指で繋げ、しかしながらバスは指でのばし、2拍目と3拍目はスタッカートにします。
これらの作業をすることで、素材を独立して聴かせることが可能になります。
例えば、9小節目。例の3連符+8分音符の素材が出てきます。これはペダル無しで軽やかにスタッカートを弾きたい部分ですので、ペダルを避けます(版によってはここにペダルマーキングが付いている版もありますが、筆者は同意しません)。
仮に、Aセクションで、9~32小節間、全くペダルを使わなかったと仮定します。そうすると、本来であればバスは5の指で弾きますので、次のバスを弾く際に、5の指を一度離して、もう一度同じ5の指でバスを弾くときに、指を離すのですからその瞬間に当然切れ目が生じます。本来バスのラインは、例えばチェロのように、1つの声部としてレガートに弾きたいところです。
2つのバスの音がものすごく離れた位置にあれば、その切れ目はさらに明らかに聞こえます。
しかしこの曲の場合。バス音が激しく跳躍することは殆ど無く、多くの場合順次進行で進みますので、次のバスを弾くギリギリのところまで5の指を離さないで演奏してみてください。ペダルが無くてもさほど違和感は無いと思います。
バスが離れた部分、例えば12小節目から13小節目、15小節目から16小節目、のような部分でバスが切れることを気にされるのであれば、バスを変える本当に直前で一瞬だけペダルをいれてやります。そうすることでバスの切れ目がなくなりますので、気になる方はそうしてみてください。
Aセクションはそのように、アーティキュレーションを大切にするべきセクションですので、ペダルは可能な限り控えてみてください。
さてBセクションですが、メロディーラインを繋ぐため、あるいはこのセクションの音や雰囲気を異ならせるため、ペダルを使っても良いと思います。ただし、47小節目や、51小節目のような、Aセクションで出てきた素材が来る場所は、その素材を再現したいので、ペダルは外した方が良いです。
音楽的な側面での注意2
この曲は大きく分けて3つの異なったムードによって構成されています。それぞれのムードを感じて演奏しましょう。それら3つのムードとは:
1 ミステリアスで魅力的な世界 Aセクション 9~32小節間
2 安定した幸せな世界 Bセクション 44~60小節間
3 圧迫される怖い世界 Aセクション 33~40小節間 60~68小節間
になります。
ご参考まで。
解説 : 佐藤 卓史
(448 文字)
更新日:2022年1月31日
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解説 : 佐藤 卓史 (448 文字)
原題の「シルフ」(Les sylphes)とは風を司る精霊で、華奢な少女の姿をしているといわれる伝説上の存在です。音楽はスケルツォ風の速く軽やかなワルツで、『羊飼いの家路』の田舎っぽいレントラーとは対極にある洗練された舞曲です。高音部でキラリと光るアルペジオの音型が、シルフの起こす気まぐれな風を表現しています。
演奏のポイント(原典 ♩.=92)
3連符の素速いパッセージは、指先を立てて、速いスピードで打鍵します。手首の回転を使いすぎないように。ワルツの伴奏型が始まったら、進行の主導権を握るのは左手です。右手はそのムーヴメントを邪魔しないように、上手にリズムに乗って弾きましょう。ト長調の中間部では、両手がユニゾンでメロディーを奏でます。右手は4小節に1回風を吹かせなければならないので、左手の上声がしっかり支えるようにしましょう。全曲を通して、念入りに書き込まれたアーティキュレーションとデュナーミクを注意深く読むことが大切です。
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