アルゼンチン作曲家で指揮者でもあったファン・ホセ・カストロ（1895-1968）は、留学先のパリでヴァンサン・ダンディに師事した。帰国後はコロン劇場の指揮者となり、また現代音楽作曲家として国立音楽院で教鞭をふるった。カストロは、ヒナステラが作曲家としてのキャリアを築くきっかけとなった人物である。ヒナステラが最初に脚光を浴びた作品《パナンビPanambí》は、バレエ作品だったものを、カストロがオーケストラ用に編曲するようにと勧めたものであった（同曲は1937年に、カストロ自身の指揮により、コロン劇場で初演されている）。カストロを讃える本曲は、ヒナステラには珍しく、都会音楽のタンゴを意識して書かれている。これも、ある意味「実験的」と言えるのかもしれない。