ハイドンを学習する生徒さんは、まずハイドンという作曲家のスタイルを知らなければなりません。昔の人、,と言うことは朧気に解っても、実際音楽史史上、どの辺に位置する作曲家なのか知らない生徒さんも多くいますので、まずそこから入ります。この場合、もちろん詳しく音楽史を説明しても良いのですが、大事なことはハイドンの音楽がどのような音楽であるかを説明することに尽きます。
まず、楽天的である事。これが重要な事です。深刻なムードは一切なく、とにかく明るく楽しくというのがハイドンの音楽です。そして、器楽が背景にあったこと。
弦楽四重奏が背景にあったこと等を説明します。弦楽四重奏を知らない生徒さんも多くいます。楽器を憶えてもらい、実際にレッスン中にタブレットやPCなどで弦楽四重奏の演奏を見せてあげましょう。これで生徒さんは少しアイデアをつかむと思います。そして曲中の要所要所で、ここはヴァイリンのボーイングであること、故に短く軽くスタッカートにすること、などを教えます。
そしてハイドンは交響曲の大家です。背景にオーケストラがあったことも教えてあげましょう。
そして宮廷で鬘を付けた紳士達がおしゃれな冗談を言っているように、ハイドンの音楽はユーモアたっぷりである事を説明します(これは大変重要です)。
冒頭8小節を見てみましょう。3小節目の、D EFis A G Fis E というフレーズがこの第1楽章の動機の1つです。5小節目にも出てきますね、そして6小節目は3小節目や5小節目よりも更に強調する様子(同じ言葉でも言い方が強くなるようなニュアンス)であることを説明します。
そして突然オクターブのフォルテが9小節目に来ます。ハイドンの、人をびっくりさせるお得意のスタイルです。G Fis E D C H と下行して来ますので、同じように、オクターブで。E D C H A G と下がっていけば良いものを、今度は軽く速い3連符に変化させて降りてきます。この辺りもハイドンお得意の驚きとユーモアたっぷりの部分です。
12ー16小節間、1ー4小節間の変奏です。21小節目2拍目、3小節目2拍目と同じ音ですが、リズムがひねくれていますね。これもハイドンならではです。
提示部のピークポイントは43ー51小節間です。楽しさのピークです。ここに至る前に多くのシークエンスがありますが、音楽が平坦にならないように変化を付けて下さい。
58小節目、展開部に入り、73小節目までを1つの区切りとしてみましょう。実に同じような音形のメロディーが何回も何回も出てきますね。この辺りにもひとつひとつのユニットに変化を付けて下さい。和声的にも考え、インパクトの強い和音に対してはより音量を与えたりします(例えば、71小節目は イタリアン6 という和音です。ドラマティックな和音ですので、音量を与えます。
展開部の考え方としては、ちょっとしたパニックがオペラの舞台で起こっていると考えます。様々な台詞や気持ちが交錯する部分です。しかしここはやはり古典派時代、すぐに楽天的場面に戻ります(87小節目、再現部より)。いつでも楽しくユーモアたっぷりに弾いて下さい。