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ハイドン : ソナタ 第42番 第1楽章 Hob.XVI:27 op.14-1

Haydn, Franz Joseph : Sonate für Klavier Nr.42 Mov.1 Allegro con brio

作品概要

楽曲ID:32203
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:4分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:応用6 応用7 発展1 発展2

楽譜情報:8件
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解説 (2)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1302 文字)

更新日:2019年12月5日
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ハイドンを学習する生徒さんは、まずハイドンという作曲家のスタイルを知らなければなりません。昔の人、,と言うことは朧気に解っても、実際音楽史史上、どの辺に位置する作曲家なのか知らない生徒さんも多くいますので、まずそこから入ります。この場合、もちろん詳しく音楽史を説明しても良いのですが、大事なことはハイドンの音楽がどのような音楽であるかを説明することに尽きます。

まず、楽天的である事。これが重要な事です。深刻なムードは一切なく、とにかく明るく楽しくというのがハイドンの音楽です。そして、器楽が背景にあったこと。

弦楽四重奏が背景にあったこと等を説明します。弦楽四重奏を知らない生徒さんも多くいます。楽器を憶えてもらい、実際にレッスン中にタブレットやPCなどで弦楽四重奏の演奏を見せてあげましょう。これで生徒さんは少しアイデアをつかむと思います。そして曲中の要所要所で、ここはヴァイリンのボーイングであること、故に短く軽くスタッカートにすること、などを教えます。

そしてハイドンは交響曲の大家です。背景にオーケストラがあったことも教えてあげましょう。

そして宮廷で鬘を付けた紳士達がおしゃれな冗談を言っているように、ハイドンの音楽はユーモアたっぷりである事を説明します(これは大変重要です)。

冒頭8小節を見てみましょう。3小節目の、D EFis A G Fis E というフレーズがこの第1楽章の動機の1つです。5小節目にも出てきますね、そして6小節目は3小節目や5小節目よりも更に強調する様子(同じ言葉でも言い方が強くなるようなニュアンス)であることを説明します。

そして突然オクターブのフォルテが9小節目に来ます。ハイドンの、人をびっくりさせるお得意のスタイルです。G Fis E D C H と下行して来ますので、同じように、オクターブで。E D C H A G と下がっていけば良いものを、今度は軽く速い3連符に変化させて降りてきます。この辺りもハイドンお得意の驚きとユーモアたっぷりの部分です。

12ー16小節間、1ー4小節間の変奏です。21小節目2拍目、3小節目2拍目と同じ音ですが、リズムがひねくれていますね。これもハイドンならではです。

提示部のピークポイントは43ー51小節間です。楽しさのピークです。ここに至る前に多くのシークエンスがありますが、音楽が平坦にならないように変化を付けて下さい。

58小節目、展開部に入り、73小節目までを1つの区切りとしてみましょう。実に同じような音形のメロディーが何回も何回も出てきますね。この辺りにもひとつひとつのユニットに変化を付けて下さい。和声的にも考え、インパクトの強い和音に対してはより音量を与えたりします(例えば、71小節目は イタリアン6 という和音です。ドラマティックな和音ですので、音量を与えます。

展開部の考え方としては、ちょっとしたパニックがオペラの舞台で起こっていると考えます。様々な台詞や気持ちが交錯する部分です。しかしここはやはり古典派時代、すぐに楽天的場面に戻ります(87小節目、再現部より)。いつでも楽しくユーモアたっぷりに弾いて下さい。

執筆者: 大井 和郎

解説 : 大井 和郎 (678 文字)

更新日:2025年3月5日
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脳内再生をしているだけで楽しい気分になれる第1楽章です。全てが楽天的で、品があり、ユーモアがあります。この第1楽章の最大の迷いどころは、 1小節目をどのように演奏するかになります。ターンを外して弾いて見ましょう。この、G AH CD というのが音が付点のリズムで来ますのでこれをまず頭で覚えます。その後にターンを入れるのですが、2つ考え方があります。 皮肉なことに、この1小節目のターンはもう2度と出てきません。ですの  で、ここを何とかすれば、、と考えてしまいがちなのですが、この小節だけ極端に遅くなる事は是非避けてください。プロのデモ演奏では、ターンをふくめ、GAGFisGA HCHAHC と、全部均等の長さで演奏する人もいます。そうすると、時間は十分に取ることが出来、問題無く弾くことができますが、付点のリズムが失われ、6連符が2つのように聞こえます。ハイドンが書いているのは、あくまで、付点のリズムでありますので、このように、6連符に聞こえさせることは、筆者は個人的に好ましくないと考えています。 しかしながら、今度は付点のリズムをきちんと守ると、拍の最初の音であ る、1拍目のGと2拍目のHがある程度長く伸びなければならなく、そうなるとその小節のテンポは遅くなり、結果、全体のテンポが遅くなります。 筆者も色々試しましたが、結論から申し上げますと、「付点のリズムを正しく守る、それによってテンポが多少落ちても、そのままのテンポで進む」ほうが、「1小節目のリズムを崩して全体のテンポを速くする」よりも良いと感じております。皆さんは如何でしょうか?

執筆者: 大井 和郎