リスト :すべての長・短調の練習のための48の練習曲(24の練習曲) 第11番 S.136 R.1 変ニ長調

Liszt, Franz:Étude en 48 exercices dans tous les tons majeurs et mineurs Allegro grazioso Des-Dur

作品概要

楽曲ID:32005
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:練習曲
総演奏時間:3分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

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楽譜情報:1件

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1049文字)

更新日:2018年3月12日
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第11番

この曲はついに初版のみとなってしまった曲です。この曲の演奏のヒントは「バランス」と「歌の部分の把握」です。この曲の90%以上の小節は表拍、裏拍とも音が書いてあります。つまりは、拍を認識しやすい曲です。しかしながら、音楽的に考えた時、音楽は横に流れてしかるべきです。

そのためには、内声はできる限り抑えて、メロディーのみをはっきり歌うように弾くことがコツです。

1小節目のメロディーラインはF Ges G As ですが、右手の内声にも同じ音が入っていることがわかりますね。つまりここの小節はメロディーがオクターブになっていますので、嫌でもメロディーは聴かせることができます。ところが、2-4小節間を見ると、オクターブはもうありません。別の音が入ってきます。このような状況の際に、1小節目でくっきりと聴こえたメロディーラインが、その後の小節でも聴こえてしかるべきです。これが「バランスの問題」になります。

この譜面の書き方から察するに、この曲はとてもルバートのかけにくい曲と考えることができます。

例えばベートーヴェンの悲愴の第2楽章のように、テンポ自体が劇的に揺れることはなく、どちらかというとストレートに進む書き方だと考えます。こうなると、メロディーラインを横に流すことがなおさら難しくなり、ゆえにバランスが大切なのです。

さて、歌の部分のメロディーラインは1小節目から始まって、どこまでいくのでしょうか?筆者の個人的な分析になりますが、歌のラインは12小節目のAで一度途切れると思います。もちろん、12小節以降も歌が続いていると仮定しても構いませんが、12-17小節間をカデンツと考えることもできますね。これが2つ目の問題である、「歌の部分の把握」になります。

この考え方を延長させると、例えばBセクションのCis-mollのメロディーラインは、27小節目から始まりますが、28小節目の1拍目で終わっていると考えることもでき、その後に書かれてある音は別の楽器であることも考えられますね。31小節目から再び歌が始まり、32小節目1拍目で再び終わると仮定したとします。そうすると、35小節目からの歌は39小節目の頭のFisisで終わるという考え方もできますね。これらの考え方は奏者の自由ではありますが、どこまでが歌の部分かということを考え、歌の部分とそうでない部分の区別をはっきりつけると良いと思います。

78-79小節間は少なくとも筆者にとっては歌の部分とは思えません。色々な可能性を考えてみてください。

執筆者: 大井 和郎

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