リスト :すべての長・短調の練習のための48の練習曲(24の練習曲) 第10番 S.136 R.1 ヘ短調

Liszt, Franz:Étude en 48 exercices dans tous les tons majeurs et mineurs Moderato f-moll

作品概要

楽曲ID:32004
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:練習曲
総演奏時間:2分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:発展2 発展3 発展4 発展5 展開1 展開2 展開3

楽譜情報:1件

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1041文字)

更新日:2018年3月12日
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第10番

このエチュードも、ブダペスト版の校訂者であるZempleni氏により、この曲集を3レベルに分けた時、最も難しいレベルに入れられています。大変高度な技術を必要とする曲ですが、第3版との違いはまず表示記号にあります。第3版ではこの10番は、Allegro agitato Molt と書かれておりますが、この初版では、moderato と一見、だいぶ雰囲気が異なるような気がします。ところがmoderatoとは言え、2拍子で書かれており、メトロノーム記号は4部音符が96になっています。1拍が96というのは結構速いテンポで、果たしてそれを聴いてmoderatoと感じる人が何人いるか疑問です。

そしてこれらの議論は、理解の仕方により、この曲の雰囲気を大きく異らせる結果となります。

ここからは個人の主観に委ねられてしまう議論になりますが、筆者がこれを演奏する時、ルバートなどのロマンティシズムを感じさせるような弾き方にはなりません。この曲で、フレーズがどこからどこまでということを知っておくことは大変大切なことでありますが、例えばそのようなフレーズの終わりやはじまりの箇所で、必要以上に余計な時間をとったり、テンポを崩すようなことにはなりません。何故ならそのインディケーションが譜面上に全く見当たらないからです。

譜面は、16分音符の3連符がほぼ休みなく書かれており、どちらかというとtoccata的な技巧を見せる要素や運動的な要素を含んでいる曲と解釈しています。よって、かなりメトロノームに近い演奏であってしかるべきと考えております。

例えばフレーズの終わりである、7小節目2拍目のFとAsにたどり着いたとき、多少の時間を取っても良いとは思います。しかしながらほんの一瞬であり、このFとAsにたどり着く手前はテーパーリング(衰退すること)をかけFとAsで消えていくようにするという位の話です。4小節目の1拍目、表拍はフレーズの終わりですので、裏拍から始まる新しいフレーズに行く前に少しだけ(本当に一瞬です)時間を取っても良いとは思います。この、テンポを崩すことなく前に前に進む曲であることを理解することがまず1つです。

次に、多くのシークエンスが登場しますが、その際に、ダイナミックレベルが平坦にならないように工夫をしてください。各セクションのゴールを目指してクレシェンドで進むことになりますが、時には和音の種類によって色を変えるなど、緊張感が増す中での変化を目指されると良いでしょう。

執筆者: 大井 和郎

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