リスト :すべての長・短調の練習のための48の練習曲(24の練習曲) 第9番 S.136 R.1 変イ長調

Liszt, Franz:Étude en 48 exercices dans tous les tons majeurs et mineurs Allegro grazioso As-Dur

作品概要

楽曲ID:32003
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:練習曲
総演奏時間:4分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:発展2 発展3 発展4 発展5 展開1 展開2 展開3

楽譜情報:1件

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (994文字)

更新日:2018年3月12日
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第9番

このエチュードを演奏するコツとしては、とにかくひたすらロマン派的な奏法で全てを処理する事です。つまり、ルバートを十分に使い、即興的な演奏をしなければならず、拍を感じさせないように横に流れていきます。もっとも参考となる音源は第3版の9番です。第3版はこの曲のアイデアそのものがより複雑になっているだけに過ぎず、基本的なアイデアは変わりません。

故に、細かい音符のタイミングを正確に数える必要もなく、また、コンスタントに書かれてある16分音符もツェルニーのように弾くのではなく、即興的に処理をしてしまいます。メロディーラインは歌であると考えて間違いありません。歌手の唱法を真似て演奏してください。

それでは各箇所の注意点や提案を箇条書きにしてみましょう。

 ◉ 4小節目、1拍目、表拍のメロディーには、非和声音のGがあります。この小節はAs C Es の主和音で構成されています。この小節に入った時にまともにペダルを変えると、非和声音のGをペダルで長く残すことになり、濁りが生じます。避け方としては、Gの次のAsでペダルを変えるようにします。その際、バスを左手小指で押さえておき、バスのAsがある状態でペダルを変えると、バスも伸び、G以外の構成音も伸ばすことができ、濁りも避けることができます。以降、これと同じ箇所はこのテクニックを使います。

 ◉ 14小節目、メロディーラインの最後の音であるEsは、次の15小節目で2オクターブ高いEsに跳躍します。この時にこの2オクターブ高いEsには即座に飛び込まないことです。十分に時間を取って2オクターブ高いEsに辿り着いてください。これは歌手の特性であり、大きな跳躍の際、歌手は十分に時間をとります。以降、これと似た箇所、26小節目、49小節目、は同じように処理をします。

 ◉ 18-19小節間、一見ツェルニーのエチュードのような書き方ですが、ここもカデンツとして扱いますので、むしろリズムを崩して欲しい部分です。即興的に弾いてください。

 ◉ 29小節目以降の和音の連続は、メロディーラインの音のみをはっきり聴かせるようにし、その他の音符は可能な限りppで弾きます。つまりは、右手の4-5の指をはっきりと聴かせます。

◉ 41小節目のトリルの速度は徐々に落として、次の42小節目の5連符の速度に合わせるように42に入るとスムーズに入ることができます。

執筆者: 大井 和郎

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