リスト :すべての長・短調の練習のための48の練習曲(24の練習曲) 第3番 S.136 R.1 ヘ長調

Liszt, Franz:Étude en 48 exercices dans tous les tons majeurs et mineurs Allegro sempre legato F-Dur

作品概要

楽曲ID:31997
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:練習曲
総演奏時間:2分30秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

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楽譜情報:1件

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1561文字)

更新日:2018年3月12日
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第3番

 この3番の技術的問題はさほど難しくありません。どちらかというと音楽的な解釈で議論を呼ぶ曲です。リストが何故、表示記号にAllegro と記したのかは判りませんが、曲の雰囲気やテンポ感は、第3版をお聴き下されば良いかと思います。どちらかというとゆったり、忙しくなく横に流れて進む曲です。メトロノームマーキングは2分音符が80となっていますが、そうなるとかなり速いテンポになります。もしかすると、リストも最初はエチュードとして難易度を高めたかったのかもしれません。最終的にテンポは奏者に委ねられますが、筆者が演奏した場合のテンポは4分音符が約80でしたので、規定の2倍遅いテンポということになります。

48-51小節間をご覧いただくと、明らかにベートーヴェンやチェルニーの影響を受けているオーケストレーションであることがわかるのですが、これを果たして、2分音符=80で弾いた時、かなり荒れた曲になることは間違いありません。2分音符と4分音符は色が黒いか白いかだけの違いですので、印刷上、あるいは記譜上のミスであることを願って止みません。学習者は担当の先生と相談の上、テンポを決定してください。

この曲のキーワードは「3つの音」の扱いにあります。楽譜を見れば、メロディーとそれ以外の音は容易に区別をつけることができます。1小節目を見てみましょう。1拍目の裏拍にある音(右:A 左:F)と3拍目の裏泊にある音(右:F 左:F)は和音の一部で伴奏系であったり、バスの役目を果たす音です。故に、メロディーラインは1小節目の場合、AGF FEDと考えるのが自然です。この3つの音は、右に行くに従って力は弱まる(AよりGが弱く、GよりFが弱い)と思って頂いて間違いありません。

もう1つ、別の考え方もあります。56-57小節間をご覧ください。メロディーラインはこの場合、右手の上声部にあります。こういう考え方もできるのですね。しかしながら、筆者は前者を取ります。何故ならば、第3版の存在です。第3版を読めば、3つの音は、上に別のメロディーラインがあり、どちらかというと伴奏系ですが、しっかりと存在していることがわかります。

そしてこの3つの音が下行している時、必ずもう1つ以上の3つの音が続いて現れます(例:1-2小節間のメロディー)。1-2小節間は4つの「3つの音」がありますので、これも右に行くに従い、衰退します。つまりは、3つの音そのものも右に行けば衰退するのですが(AGF)、その秩序を守りつつ、4つのグループを1つずつそれぞれ衰退させていきます。

この下行する「3つの音」は、時に上行します。20小節目をご覧下さい。この場合、3つの音は、上行しつつ22小節目の3拍目、Fisにたどり着きますが、音が上行している場合、今度は衰退せずに逆にクレシェンドをかけます。もっと厳密にお話をすると、20小節目の1つ目ABCは次の3つの音である、BCDよりも小さいとはいえ、和声学的には解決音になり、B-durのトニックに解決されるので、BCDの方が弱いと言う考え方もあることを忘れないでください。

この法則を頭に入れておけば、解釈がとてもわかりやすくなります。例えば、18-19小節間は、2つのフォルテが書いてあり、どちらがより大きいフォルテか悩んだ時、1つ目のフォルテは下行をしようとする3つの音が最も高い位置にあることがわかります。故に、1つ目のフォルテの方がより大きいことがわかりますね。もちろん、これらの例は1つの考え方に過ぎず、和音の性格によっても例外は出てくると思います。

もう、言うまでもありませんが、伴奏音は弱く、そしてメロディーラインは必ずと言っていいほどもう1つ下の声部と10度の関係を常に保ちます。勿論下の声部は弱くします。

執筆者: 大井 和郎

楽譜

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