第1楽章 Allegro con brio 2/2 ロ長調
主題はピアノ・ソロに導かれ、初めピアノとチェロで奏される。音楽はリズム、和声、強弱全ての面から次第に勢いを増す。第1稿とは異なり、フォルテで初めてヴァイオリンが入って、主題がより旋律的で均衡のとれた楽節となる。主題の3度下行は、移行部にかけて動機操作の中心的素材の1つとなる。
第1稿のものに代わる新たな副主題は、旋律の跳躍やバスの半音階など主要主題と対照的な点が多い一方、弦楽器が後から旋律声部に加わって主題がより旋律的になる、後々動機が切迫するといった点は主要主題と共通する。第100小節からはピアノのシンコペーションと副主題の装飾変奏により、音楽は推進力を増して小結尾へ向かう。
展開部は充実した動機操作の場。前半では第127小節のe-mollの確立を皮切りに小結尾の動機の模倣処理が始まる。第137小節で主要主題断片が短調で現れると、ピアノが小結尾の動機から和音進行で伴奏音形を展開する。ここでピアノ伴奏を導く動機を元に後続部分の模倣が展開される。第162小節で、再び主要主題を境に音楽は移行部由来の局面へ入る。
第175小節からは、展開部の大半で対を成していた弦パートが独立し、楽章内で初めて弦がピアノパートを囲む。
この新しい響きの中、音楽は一時盛上りを見せるが、すぐ全体の音域が下がり始め、そのエネルギーは減じていく。弦パートがユニゾンへ収束、ピアノも下行をやめたところで、ヴァイオリンの最低音域から主要主題がgis-mollで再現する。調と主題の二重回帰はピアノが旋律声部となる第197小節で達成される。h-mollの副主題までの嬰ト→ロの調構造は呈示部と対称関係にある。なお移行部は、展開部の後半にも用いられたためか、再現部では短縮される。
コーダ前半は主要主題動機の変奏。後半は旋律的で纏まった楽節よりも連続的な和音呈示を主眼とする。ここは強弱とテンポの変動などが掴みどころのない印象を与えるが、in Tempoに入ると一転、畳みかけるような弦とピアノの応答となり、音楽は決然とフォルティシモを指向する最後の盛上りを見せ、改め終止で楽章が終わる。