大きく見ればA-B-Aによる経過句-C-Aによる経過句-A’-B’-Aによる経過句-C’-Aによる経過句-A’’-コーダとなっていてロンド形式と解釈できるが、更に細かく見ていくと複雑な構成になっている。
・冒頭
冒頭のダクティルス・リズム(長短短)による同音のモティーフ(シューベルトが好んだモティーフでもある)は一見新しい素材のようだが、実は第1楽章第2主題、第2楽章主部で既にリズム・モティーフとして登場している。
Bセクションでは、第16小節からの主題と、第40小節からの主題の2つが提示される。
・第12~17小節
・第38~42小節
第84小節からのCセクションに入ると、コラール風の楽想とその変奏が提示される。コラールには、第1楽章の2つのモティーフ、第4楽章のリズム・モティーフ全てが緊密に組み込まれている。C’セクションではコラールは現れず、変奏部分からの再現となるだけに、この一箇所は際立っている。
・第84~95小節(第94~95小節の右手のリズム・モティーフは逆行形)
第104小節から50小節に亘る展開がされた後、第154小節から上記コラールの変奏の主題が再登場する。この主題を使って更に展開は進められ、第176小節からのAセクションのモティーフによる属音ペダルへと向かうため、厳密には再現部とは言い難いのだが、Cセクション内があたかも提示-展開-再現の体を成しているように感じられる。
・第96~99小節
・第152~156小節
第192小節からは、これまでの流れが転調等の展開のディテールに変化が加えられて再現される。そして第367小節で冒頭主題が再現されると完全終止しないままコーダへと雪崩込み、fから一気呵成にfffへと到達して終結する。なお、最終小節にはpの指示が自筆譜にあり、pの記載されている版と記載されていない版があるが、fffのまま演奏されるのが一般的である。
・終結部(自筆譜、IMSLPより転載)