ヘンデル :組曲 アントレ HWV 453

Händel, Georg Friedrich:Suite Entrée HWV 453

作品概要

楽曲ID:30387
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:組曲
総演奏時間:1分40秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1038文字)

更新日:2023年5月15日
[開く]

この曲は、奏法によってはとても平坦で間延びがしてしまう曲です。しかし、カデンツ(終止形)に注目するとわかりやすくなります。1~7小節間を前半と呼び、8~19小節間を後半と呼びます。それでは解説していきます。

冒頭から始まり2小節目3拍目が1つ目のカデンツになります。完全終止です。g-mollで始まり、g-mollのカデンツで終わっています。ダイナミックは大きくありません。5小節目に至って、ここで2つ目のカデンツが来ます。5小節目3拍目です。ここはB-durに転調していると考えて良いでしょう。筆者の見ている版にはここでフォルテマーキングが書いてありますが、g-mollの中でのB-durというのは、筆者にとっては決して強烈な調ではなく、故に、柔らかさが欲しいので(筆者の主観です)、筆者であればそこまでフォルテにはしません。

3つ目のカデンツは、7小節目3拍目に来ます。これは半終止で、ドミナントで終わっていますね。6小節目4拍目からの右手を見るとD E Fis G A と、音階的に上行していることがわかります。故に、この半終止は筆者であれば強めに終わります。

ここまでで前半ですが、そこまでのドラマはなく、おとなしく終わります。むしろ半終止が後半へのテンションの高まりを予想させます。

後半、9小節目で再びB-durに転調しますね。9~10小節間、右手にシークエンスに近いパターンが見られます。10小節目3拍目から1拍毎にシークエンス上行形と考えて良いパターンが出てきて、どんどん上行します。そして4つ目のカデンツが12小節目3拍目で来ます。これはB-durのカデンツで完全終始です。楽譜には再びフォルテがマーキングされていますが、先ほどと同じ理由により、筆者であれば、そこまで大きくはしません。

後、12小節目3拍目以降、シークエンス上行形が再び現れ、15小節目ではg-mollに戻り、テンションは一気に高くなります。16小節目、更に上行し、17小節目1~2拍間でピークポイントに達し、3拍目で5つ目のカデンツになります。これも完全終止であり、g-mollを強く印象づけています。

その後、メロディーラインは下降し最後のカデンツを迎えますが、最後は最も威厳のある、重厚なカデンツで終わります。最後もフォルテで終わって良いと思いますので、19小節目1拍目からクレシェンドをかけ、3拍目の最後の和音にゆっくりとたどり着いて下さい。

これがこの曲全体をドライブする道筋です。ご参考まで。

執筆者: 大井 和郎

参考動画&オーディション入選(1件)

畑 勝法(入選)

楽譜

楽譜一覧 (1)