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シューマン :主題と変奏 (最後の楽想による幻覚の変奏曲) Ahm F39 変ホ長調

Schumann, Robert:Thema mit Variationen (Geistervariationen) Es-Dur Ahm F39

作品概要

作曲年:1854年 
出版年:1939年 
初出版社:Hinrichsen
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:変奏曲
総演奏時間:11分30秒

解説 (1)

総説 : 上山 典子 (923文字)

更新日:2018年3月12日
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1854年初頭、43歳のシューマンの健康悪化は極限に達していた。夫婦で5か月に及ぶロシア演奏旅行中だったちょうど10年前にも、鬱病の発作に悩まされ、神経疲労から療養を余儀なくされたシューマンだったが、今回の精神衰弱はより深刻だった。年初めから激しい幻聴と幻覚に悩まされていたが、2月17日の夜には、天使から与えられたと主張する変ホ長調の旋律を紙に書き留め、22~23日にかけてその旋律を用いた《主題と変奏》を作曲した。この曲が「幻覚の変奏曲」と呼ばれているのは、まさにシューマンのこうした精神的危機に由来する。  それから数日後の2月26日、シューマンは自ら精神病院に入ることを希望した。しかし、ライン地方の謝肉祭が最高潮に達した翌日の「薔薇の月曜日 Rosenmontag」、《主題と変奏》の清書譜作成中に家を抜け出すと、極寒のライン川に身を投げた。この投身自殺は二人の船員に救助されたことで未遂に終わったが、自宅に連れ戻されたシューマンは早くも翌日、しばしの中断を経た《主題と変奏》を完成させた。その後、ボン郊外エンデニヒの私立精神病院に収容され、2年後の1856年7月29日、静かに生涯を閉じた。享年46、先月に誕生日を迎えたばかりだった。意図せずして最後の作品となったこの曲の主題は、幻聴などではなく、真に神からの啓示だったのだろう。 【主題提示】後にヨハネス・ブラームス(1833-1897)によって「変奏としては全くふさわしくない」と評された主題は変ホ長調、2/4拍子で、コラール風の静かで内面的な響きを持つ。 【第1変奏】主題とほとんど同じ旋律線で、内声部に三連譜の装飾が追加されている。 【第2変奏】基本的に変化はないが(例外は結尾近くでII度調の借用和音が主旋律にも影響を与える箇所)、左手声部にも類似の旋律が歌われるため、カノン風の響きを生み出す。 【第3変奏】主旋律が左手に移る。 【第4変奏】唯一、主調以外のト短調となり、冒頭の右手内声部には数ヶ月前に作曲したヴァイオリン協奏曲の第2楽章の主題、ニ-ハ-変ロ-変ホ-ニ-ハ(d1-c1-b-es1-d1-c1)が現れる。 【第5変奏】もっとも自由で、半音階の動きが目立つ。

執筆者: 上山 典子

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