サン=サーンス :動物の謝肉祭(2台ピアノ) 耳の長い登場人物
Saint-Saëns, Camille:Le carnaval des animaux "Personnages a longues oreilles"
解説 : 中西 充弥 (505文字)
何とも意味ありげなタイトルがゆえに、多くの憶測を呼び、敵対する批評家を揶揄しているのではないか、との説もあるが、作曲家本人の証言がないので、謎としか言いようがない。少なくとも、確実なのは、このタイトルと実際の曲(ヴァイオリンによるヒハーンといういななき)を聞いてフランス人が真っ先に思い浮かべるのがロバであるということである。よって、このタイトルは動物当てゲームであるとするのが一番無難な回答であるが、実はフランスでは、ロバはのろまの代名詞なのである。かつてフランスの学校では、宿題をしてこないような不真面目な生徒の懲罰の一つとして「ロバ帽子」があった。ロバの耳をかたどった帽子を被せて教室の隅などに立たせるのである。タイトルには「登場人物」とあるから、もしかしたら、誰かにロバ帽子を被せてカーニバルの行進させている図なのかもしれない。だとすれば、公然のさらし者にしているわけなので、かなり屈辱的なものであり、それだけ憎い人物がいたのであろうか。もともとこの曲は内輪の集まりのために書かれた曲であるから、当事者の間では「ああ、あいつのことか」と聞きながらニヤニヤしていたのかもしれないが、今となっては謎である。
動物の謝肉祭 8. 耳の長い登場人物