リスト : 伝説 水の上を歩くパオラの聖フランチェスコ S.175 R.17
Liszt, Franz : Légendes St.François de Paule marchant sur les flots
作品概要
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:種々の作品
総演奏時間:9分00秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (1)
解説 : 上山 典子
(594 文字)
更新日:2019年6月19日
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解説 : 上山 典子 (594 文字)
【第2曲】〈波を渡るパオラの聖フランチェスコ〉
パオラの聖フランチェスコ(1426-1507)は第1曲の聖人と同じ名前だが、活躍した時代は2世紀以上も離れた別人である。この聖フランチェスコについても多くの奇跡が伝えられているが、なかでも、『波を渡るパオラの聖フランチェスコ』に掲載された伝説が良く知られている。それは、外見上の貧しさを理由に船頭から乗船を拒まれた聖人がイタリア本土とシチリア島の間のメッシーナ海峡を歩いて渡ったというもので、この奇跡は多くの画家たちの素材となってきた。初版譜の序文には、リストがワイマール時代の自宅で所有していたエデュアール・フォン・シュタインレ(1810-1886)による線描画にインスピレーションを与えられたことが記されている。
曲はアンダンテ・マエストーソで、低音部でのユニゾンの序奏で開始、続いてこのホ長調の主題旋律がバスの伴奏に乗って朗々と歌われていく。海峡の荒波を象徴するバスのトレモロが激しいうねりを打つのに続いて、鋭く突き刺す半音階の上行が繰り返し押し寄せる。暗く、長いこの苦境をついに乗り越えると、そこには神々しい主題旋律が待ち受けている。レントと記された結尾は一時的にレチタティーヴォ風となるが、序奏のユニゾンが静かに再帰すると、最後は堂々としたアルペッジョで栄光のfffに到達する。リストの宗教的感動から生まれた劇的な音芸術である。
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