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リスト :巡礼の年 第3年 「エステ荘の噴水」 S.163/R.10 A283

Liszt, Franz:Années de pèlerinage troisième année "Les jeux d'eaux a la Villa d'Este" S.163/R.10

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:7分30秒

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1619文字)

更新日:2018年3月12日
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4.「エステ荘の噴水」  この曲の技術は想像するよりも難しいです。これ程まで多くの音があり、その中でメロディーラインは単旋律です。リストの音楽にはよくあることですが、メロディーラインに対してこれほどまで多くの装飾的な音符があるのも珍しいのではないかと思います。ゆえに、バランスが命取りになります。これに関しては後述します。  まず、テンポの問題ですが、テンポマーキングはAllegerttoと書かれています。冒頭(1-13小節間)暴走してしまう演奏を耳にすることがありますが、14小節目以降のテンポと同じです。困難な箇所は遅くし、簡単な箇所は速く弾かないように注意します。そして、メトロノームのような演奏をしないことです。十分なルバートも必要になりますし、ブローディング(その部分のみゆっくり大きく聴かせる)も必要になります。この曲は、リスト本来の厳しさや威厳とは打って変わって、美しさを表現する曲であるので、箇所に応じて、テンポを柔軟にコントロールします。カデンツ的な部分ではテンポをゆっくりにしたりすることはありますが、指示がない限り基本的にaccelはしません。リストはそれでも出来る限りのテンポマーキングを色々な場所に書いています。書かれていることには少なくとも従うようにします。  次にバランスに関してです。主旋律が出てくるのは、40小節目からです。主旋律がどの部分であるかはお分かり頂けると思うのであえてここには書きませんが、この曲の魅力を引き出す1つの方法としては、トレモロやトリルを限りなく速く、弱く、弾くことにあります。それ以外の部分でもメロディーラインでない限りは、音量を出来る限り落としてください。  とは言え、これほどの多くの音符を速く、弱く、弾くためにはそれなりの練習が必要になってきます。例えば、40-53小節間の右手はどのように演奏すれば良いのでしょうか。これはまず、練習してからの話になりますが、最終的には、鍵盤の一番下まで打鍵することはありません。鍵盤の一番下まで打鍵してしまうと、その鍵盤が戻るのに時間を食うからです。しかし鍵盤の中間辺りまでの打鍵であれば鍵盤の戻りも速いですし、音も小さく弾けます。練習方法はいつくもありますが、ヒントとしては筋肉をつけることにあります。素早い手首の回転が必要になりますが、そうするためにはそれなりの筋肉が必要になってきます。ここに練習方法を書くとキリがないので、技術に長けた先生やピアニストに練習方法を訊いてみてください。  54-61小節間の右手はそれほど音数は多くないですが、それでも手首の重さのみを利用して、鍵盤に触れる程度の音量を保ってください。  106小節目はメロディーラインがピークを迎え、最も大きくなる部分です。ここを小さくしてします奏者を何人も聴いていますが、ここは大きく、ブローディングしてください。  108-113小節間と114-119小節間はカラーを変えます。それ以降の、左手6度は、左手の親指を利用して旋律をはっきりと出します。  136-143小節間、ペダルの問題があります。和音が変わるたびにペダルを変えるのですが、和音が変わった瞬間に、右手に3つの連打音があります。普通にペダルを変えるとこの連打音がドライになってしまいます。ペダルは連打音が終わった後で変えるようにします。  144小節目以降、右手の5の指のみを出すようにすると綺麗に仕上がります。当然、左手はpppです。 この曲の最も難所の部分が、182-197小節間になります。左手が問題になります。相当の練習量が必要な部分です。  最後に重要なことをひとつ、この曲をはじめ、巡礼の年には多くの標題が書かれています。しかしながらこれらの曲は人間の心理描写です。絵画的描写ではありません。エステ荘の噴水と言っても、噴水そのものの描写ではなく、噴水を見ている人の頭の中の描写です。

執筆者: 大井 和郎

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