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リスト :超絶技巧練習曲 第9番「回想」 S.139/9 R.2b 変イ長調

Liszt, Franz:Études d'exécution transcendante "Ricordanza" As-Dur S.139/9

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:練習曲
総演奏時間:10分30秒

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1487文字)

更新日:2018年3月12日
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第9番 「回想」

この記事をお読みになっている教師の皆様や、学習者の皆様はかなり上級であることを前提にお話をしたいと思います。この曲は、超絶技巧練習曲集全12曲の中ではもしかしたら弾きやすい曲の部類に入るかもしれませんが、やはり確固たる技術が無い事には思い通りの演奏が困難になります。しかし何よりも難しいのは曲の理解かもしれません。この曲は全編を通して、歌手が歌う曲であり、ピアニスティックの要素よりも歌の要素が強い曲です。ゆえに、奏者は歌心は勿論、まず歌手の歌い方を知っていなければなりません。自信の無い方は、とにかく毎日のように歌曲を聴いて、歌手がどのように歌うのかを研究しなければなりません。

もう一つ、レゾネンスについてお話しします。レゾネンスとは「余韻」の事で、メロディーでも伴奏でも無い部分や音を指します。この曲には歌の部分の他にレゾネンスが多く出てきます。通常の曲であれば、レゾネンスとそうで無い部分がはっきり分かれて書かれている事が多いのですが、この曲に関しては、それが非常に分かりづらく、歌の部分と見分けがつきにくくなっています。

さてここから先は主観的な話となり、議論を呼ぶところではありますが、例えば15小節目からのメロディーラインは18小節目で一区切りとなりますね。17小節目の歌の部分はいとも簡単に、右手に見つける事ができます。ところが、次の小節の歌の部分はどこまでかという話になります。18小節目に書いてあるような高いレジスターや速いパッセージは歌の人には無理なことです(例えばこういうことが、常に歌を聴かなければならない理由の1つです)。筆者の個人的な考えでお話をさせていただくと、18小節目はAs1音のみでフレーズが終わるか、G As 2音でフレーズが終わるかどちらかであろうと思っています。そうなると、その先のアルペジオのパッセージはレゾネンス的な、ピアニスティックな部分ですからleggieroで優しく、軽く、弱く、速く弾きます。

このような議論は、曲中あっちこっちに見られます。どの部分が歌の部分かを考え、どの部分がレゾネンス的な部分であるか、装飾部分であるか、ピアノ伴奏の部分であるか、見極め、それ相応の対処をしなければなりません。 その他注意点を箇条書きにします。

 ◉ 14小節目、長いポーズがあります。これがよく無視される演奏を耳にします。

 ◉ 15小節目からのメロディーラインはこの曲の主題ですが、拍の頭に8分休符がありますね。これは、ある種の「躊躇い」です。時にメロディーが表拍の休符の後に出てくる場合、アジタートになることもしばしばあります(例:ショパンエチュード 10-9)。試しに、この休符をわざと無くして、メロディーラインを拍の頭から弾いてみてください。これでも音楽にはなるもののなんとも味気ない音楽に変わってしまいます。しかしながらここの部分はdolceですので、決してついアクセントなどをつけません。少し哀願するとか、勿体振るとか、オシャレであるとか、そのような特別な感情を表現している休符です。

◉ 50小節目、ここは単なるargamenteです。リストのlargamenteは極端に遅くするということではありません。むしろテンポを上げるピアニストもいるくらいです。要は、どっしりと、そしてmolt espressivoという意味です。

◉69小節目、最初の20連符と、次の25連符ではムードが全く異なります。表現を忘れないように。

◉とにかく歌手を真似る事、自由に即興的に演奏して、歌手最優先で音楽を進めてください。

執筆者: 大井 和郎

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