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リスト :超絶技巧練習曲 第6番「幻影」 S.139/6 R.2b ト短調

Liszt, Franz:Études d'exécution transcendante "Vision" g-moll S.139/6

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:練習曲
総演奏時間:5分30秒

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1287文字)

更新日:2018年3月12日
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第6番 「幻影」

このエチュードを演奏するにあたり重要なポイントは、音楽的な側面をどう表現するかです。つまり、技巧的にもかなり辛いエチュードであるがために、神経がそちらの方にばかり向かい、肝心の音楽的表現が欠ける演奏にならないようにすることです。

まず大切なのはテンポです。このエチュードは変奏的ですので、最初の主題が色々な形で繰り返されます。しかしながら全体のテンポはたった1つです。難しい場所に来たからといってテンポが遅くなることは好ましくありません(もちろんグランディオーソ的な部分やその他の例外的な部分も多くあります)。テンポは1つにして下さい。セクション毎にテンポを異らせないようにという意味です。最も困難な箇所を基本にして、それと同じテンポを冒頭に持って来れば良いでしょう(例:48小節目等)。

このエチュードの演奏の失敗例としては、演奏が機械的になってしまう事にあります。最初の主題が終わるのは、12小節目としましょう。このくらいゆっくりしたテンポの中で主題が進むと、主題そのもののシェーピングがなされていない事がよくあります。1つの方法なのですが、メロディーの音だけを抜粋してみましょう。8小節目までですと、2つに分かれ、D Cis D B Es DC B As Es G Fis と、D Cis D B Es E F D DC B になりますね。それではこのメロディーを単旋律で、ペダルをつけて綺麗に弾いてみましょう。もちろん左手で和音を足しても構いません。

そうすると、シェーピングはほぼ、音が高い位置にある場所に音量が増し、音が低い位置にある場所に行くに従い音量が減少することがわかります。和声進行を加味してもこの状況は同じですね。そして、今、右手で旋律のみを弾いたシェーピングを忘れずに、今度は楽譜通りにすべての音を普通に弾いてみてください。単旋律で弾いた時のシェーピングが再現されていれば成功です。

今度はそれにルバートを加えてみましょう。そうすると、伴奏部分の6連符のアルペジオの速度を、メロディーラインの音によって変化させることができますね。例えば、6連符が割と速く動くのは1ー2小節目ですが、3-4小節目は徐々に遅くなっていってしかるべきだと思います。7小節目の和音はサプライズの和音ですので、和音を弾いてから少しだけ間を空けて6連符に入るという表現もできますね。これらはほんの一例にすぎませんが、要は、メトロノームのように、コンピューターのように弾かないようにするということです。

そして今、12小節目までのシェーピングは基本となり、後の全てのメロディーラインに適応させます。どんなに複雑な状況になろうと、どんなにフォルテシモになろうともシェーピングは絶対に忘れないようにします。 その他注意点を箇条書きにしておきます。

◉28小節目、重要な音は、1拍目表拍のと、2拍目表拍のEsです。これを他の音よりも少し大きく弾きます。

◉56小節目から左手にメロディーが来ます。左手の親指のみに神経を集中させ、メロディーラインをはっきりと出してください。

執筆者: 大井 和郎