このプレリュードを演奏する際に2つの大事なことを覚えておいてください。
1 左手がなくなり、右手だけで演奏するソロの部分が多くあります。即興的に、ルバートも使って歌い上げたいのですが、この曲の、3/4拍子を崩さないように気をつけます。テヌートをかける音符があまりにも長すぎたり、付点2分音符がそれ以上になってしまったりというような、拍を崩すことがないように気をつけます。まずそれが1つ目。
2 11小節目と42小節目から始まるpiu mossoを考えてみます。piu mossoとは、piu=もっと
mosso=動いて という意味で、もっと動いて欲しい、今までよりも動きを付けてという意味であり、ここから突然、テンポが速くなるということではありません。
ちなみに、piu mosso以外の部分をご覧になってください。右手のソロの部分であったり、とてもゆったりとして即興的な部分ですね?つまりは、piu mossoが始まってから初めて1拍目が左手で埋められていることにお気づきでしょうか?piu mosso以外の部分では、左手が1拍目を演奏するのはほんの数小節しかありません。別の言葉で言うと、piu mossoが始まったら、テンポを安定させてという意味にも取れます。
そして、そもそもこのpim mossoの部分はどのような描写なのでしょうか?この曲の表記は、Lamentoso(悲しく)という表記です。そしてpiu mossoの部分は、長調ではあるものの、喪失感を感じさせる表現と考えても良いですし、昔の思い出が蘇ってくる描写と考えても構いません。どっちにせよ、この部分が急に、速度が速くなって、全く別のムードを作ってしまうテンポにはしないようにします。
18~19小節間をご覧ください、音もリズムも全く同じですね。これは、思い出が徐々に頭から消え去り、現実の世界に入る前の段階と考えます。故にディミニュエンドをかけます。
このプレリュード、メロディーラインは主に右手にありますが、左手の副旋律も大切に扱います。
例えば5~6小節間の左手の素材は曲中4回繰り返されます。5~6小節間、7~8小節間、30~31小節間、32~33小節間です。5~6小節間を例に取ると、6小節目の1拍目、左手の一番上がDisの和音に向かってクレシェンドをかけ、Disに達したらディミヌエンドでEを消えるように弾きます。これはダブルサスペンションという非和声音で、悲しみを強く表現します。このような左手の部分も大切に弾きます。