この曲はどちらかというとアンサンブル系の曲であり、歌手が歌う曲ではありません。楽器は何であるかは解りませんが、ボーカルの要素よりも器楽の要素が強い作品です。よって、ルバートを殆どかけないでストレートなテンポにより、アーティキュレーションもはっきり、そして軽快さが要求されます。
気をつけることとしてはスフォルツアンドです。強拍、弱拍、あらゆる場所に現れますので、これを守ります。ところでスフォルツアンドという言葉は誤解されていることがよくありますので、念のためにお伝えします。スフォルツアンドとは、その「ダイナミックの範囲内でアクセントをつける」という意味であり、決して「その音だけを強く」という事ではありません。よって、スフォルツアンドがppやpの中に書かれていたとき、奏者はほんの少しだけアクセントを付ける程度にとどめ決してフォルテにはしません。もう一方で、スフォルツアンドがFやFFに書かれていたときは、かなり大きな音になってかまいません。
冒頭4小節間、地位の高い人物が独自のアクセントを付けて、プライド高くお話をしているようなイメージです。4小節目3拍目から8小節目2拍目まで、今度は内緒話を始めます。そして、9小節目から16小節目2拍目まで、期待感一杯の話を始めます。そして16小節目3拍目より、夢物語を語り始めます。このように、品位のある、おしゃれな、格調高いお話のようなイメージで演奏して、セクション毎の心理描写を表現します。
技術的に困難な箇所は特に見当たりませんが、随所に見られる付点の処理には気をつけます。付点8分音符+16分音符のリズムの奏法は、16分音符を次に待っている4分音符の、あたかも装飾音のように、1つのモーションで一気に演奏することがこつで、決して16分音符1つに対して1回力を入れず、4分音符とペアにしてしまい、一気に弾くことです。このリズムが重たくなると音楽的表現が難しくなります。
アーティキュレーションをはっきりと付けることはこの曲に大変重要なことです。軽快に演奏し、スタッカートは決して重くならないようにしてください。